暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六話 フェザーンにて
[4/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
乱軍はエーリッヒが両親を貴族に殺されたこと、彼自身も殺されかけたことを宣伝している。帝国に裏切られた少年、その彼が帝国の非人道的な陰謀を暴いた。エーリッヒは悲劇の英雄で暴虐なる帝国の犠牲者として宣伝されている。
「例の件、何か分かったか」
アントンが声を潜めて尋ねてきた。俺は黙って首を横に振る。アントンの顔が歪むのが見えた。
「駄目だな、何も分からない。情報が有るとしたら憲兵隊ではなく内務省だろう」
「内務省、つまりは警察か……」
エーリッヒの両親を財務尚書カストロプ公が殺した。そしてエーリッヒ自身もカストロプ公の部下によって殺されかけた。エーリッヒを帝国に戻すためにはカストロプ公の犯罪を暴き、エーリッヒの亡命が止むを得ないものだったと周囲に納得させるしかない……。
エーリッヒの両親が誰に、何故殺されたのか? 今俺とアントンはそれを調べている。俺は憲兵隊の力を利用して、そしてアントンは仕えているブラウンシュバイク公の影響力を利用して……。
「アントン、一つ気になった事がある」
「なんだ?」
「エーリッヒの両親が殺されたときなんだが、当時の司法尚書ルーゲ伯爵が辞任している」
アントンは訝しげな表情をしている。そして小さく“辞任”と呟いた。
「ルーゲ伯爵は権力を利用して私腹を肥やす事にしか興味を示さないカストロプ公に強い反感を持っていたらしい。彼のやり方を“見事な奇術”と皮肉っていたそうだ」
「そのルーゲ伯爵が辞任した……。関係が有るのかな?」
「分からん、しかし気になる。確認してくれないか」
憲兵隊の一中尉が尋ねたところで門前払いが落ちだろう。しかし皇帝の娘婿であるブラウンシュバイク公の部下が尋ねれば或いは話してくれるかもしれない。何か知っているのであれば……。
「分かった、やってみよう」
そう言うとアントンは力強く頷いた。
宇宙暦 792年10月27日 フェザーン ミハマ・サアヤ
今、同盟軍中尉ミハマ・サアヤはフェザーンに到着しました。当然ですがヴァレンシュタイン大尉も一緒です。これから私達は同盟の高等弁務官府に行き挨拶をしなければなりません。
私と大尉がフェザーンに行くという事は周囲にはちょっとした騒ぎを引き起しました。第四艦隊に乗り込んだときは一応任務? だったけど、今回は半分以上遊びである事は衆目の一致するところです。なんと言ってもフェザーンまでは民間船を使っての移動です。観光旅行といわれても仕方がありません。後方勤務の女性士官からはかなり盛大にブーイングが出ました。
士官学校の同期生からも冷やかしの連絡が有りました。ヴァレンシュタイン大尉は同盟の英雄、その英雄とフェザーンへ旅行……、婚前旅行じゃないのとか冷やかされました。まあ誰だって怒るだろうし、冷やかし
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ