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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
釣り自慢
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身を使って竿を(あお)った。傍目(はため)にもわかるほど糸が張り詰め、びぃん、という効果音が空気を揺らした。

「掛かりましたよ!!後はお任せします!!」

ニシダから手渡された竿を、キリトは恐る恐る引いてみた。びくともしない。まるで地面を引っ掛けたような感覚だ。これは本当にヒットしているだろうかと不安になり、ニシダにチラリと視線を向けた瞬間、突然猛烈な力で糸が水中に引き込まれた。

「うわっ」

慌てて両足を踏ん張り、竿を立て直す。使用筋力のゲインが日常モードを軽く超えている。

「こ、これ、力いっぱい引いても大丈夫ですか?」

竿や糸の耐久度が心配になり、キリトはニシダに声を掛けた。

「最高級品です!思い切ってやってください!」

興奮しているニシダに頷き返すと、キリトは竿を構え直し、全力を開放した。竿が中ほどから逆Uの字に大きく(しな)る。

キリトは踏ん張った両足をジリジリと後退させ、遅々(ちち)としながらも確実な速度で謎の獲物を水面に近づけていった。

「あっ!見えたよ!!」

アスナが身を乗り出し、水中を指差した。キリトは崖から離れ、体を後方に反らせているので確認することができない。見物人達は大きくどよめくと、我先にと水際(みずぎわ)に駆け寄り、崖から急角度で深くなっている湖水を覗き込んだ。キリトは好奇心を抑え切れず、全筋力を振り絞って一際強く竿をしゃくり上げた。

「……?」

突然、キリトの眼前に身を乗り出していたギャラリー達の体がぴくりと震えた。皆揃って2、3歩後退する。

「どうしたん……」

キリトの言葉が終わる前に、連中は一斉に振り向くと猛烈な勢いで走り始めた。キリトの左のアスナ、右をニシダが顔面蒼白で駆け抜けていく。呆気に取られたキリトが振り向こうとしたその時__。

突然両手から重さが消え、キリトは後ろ向きに転がって尻餅(しりもち)をついた。

糸が切れた、と咄嗟に思い、竿を放り投げて飛び起き、湖に向かって走り寄る。その直後、キリトの目の前で、銀色に輝く湖水が丸く盛り上がった。

「な……」

眼と口を大きく開けて立ち尽くすキリトの耳に、遠くからアスナの声が届いてきた。

「キリトくーん、あぶないよー!」

振り向くと、アスナやニシダを含む全員は既に岸辺の土手を駆け上がり、かなりの距離まで離れている。ようやく状況を呑み込みつつあるキリトの背後で、盛大な水音が響いた。途轍(とてつ)もなく嫌な予感を感じながら、俺はもう一度振り向いた。

__魚が立っていた。

詳細に言うと、魚類から爬虫類(はちゅうるい)への進化の途上にある生物、シーラカンスのもう少し爬虫類寄りといった様子の奴が、全身から滝のように水滴を垂らし、6本のがっしりとした脚で岸
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