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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
釣り自慢
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に向かって、

「やろうよキリト君!面白そうじゃん!」

アスナが、ワクワク、と顔に書いてあるような表情で言った後、傍らの俺に視線を移して訊ねる。

「ネザー君も一緒に行く?」

「釣りに興味はないが、湖の主とやらは見てみたい気もする」

「じゃあ行くってことでいいね」

相変わらず愛想のない物言いだが、アスナは構わず笑顔で対応する。初めて会った頃は俺に対して文句ばかりぶつけてきた堅物女が、今では親しく接するようになった。冷徹な俺に慣れてしまったということだろう。











その夜。

俺は50層《アルゲート》の貧相な宿屋の一室のベッドに横たわり、今日を含めたSAOでの今までの出来事を振り返った。

……この世界にも……普通に生活をする人間は、多くいる。

夕方に会ったニシダや、第1層《はじまりの街》で子供達と過ごすサーシャなど、仮想世界で普通の生活を送っている人達を、俺は今まで奇妙だと思ってきた。強要されたデスゲームという環境でも普通らしい生活を送るのは可能。それに気づくのに時間が掛かったのは多分、俺1人だけだろう。

だ__…俺は1日ごとに同じことを考える。

SAOをクリアして現実に帰還できたとしても、10年間も追い続けた《黒いスピードスター》を見つけ出すまでひたすら生き(なが)らえるだけの人生に逆戻りとなるだろう。

死を恐れてはいない。死ぬことで自分が犯した過ちを正せるなら、それでも構わないと思ってきた。復讐を成し遂げられるなら、何も望まないと。しかし、長い年月が経つにつれてそのことを心のどこかで諦めたのかもしれない。

生きる、とはどういうことなのか?俺はその答えを、未だに見出せずにいる。











ニシダから主釣り決行の知らせが届いたのは3日後の朝だった。どうやら太公望(たいこうぼう)仲間に声を掛けて回っていたらしく、ギャラリーが30人から来るという。

「参ったなぁ。……どうする、アスナ?」

「う〜ん……」

正直、その知らせは迷惑だった。情報屋やらアスナの追っかけから身を隠すために選んだ場所なので、大人数の前に出るのは抵抗がある。

「これでどうかな……」

アスナは栗色の長い髪をアップにまとめると、大きなスカーフを目深(まぶか)に巻いて顔を隠した。更にウィンドウを操作して、だぶだぶした地味なオーバーコートを着込む。

「おお。いいぞ、生活に疲れた農家の主婦っぽい」

「……それ、褒めてるの?」

「もちろん。俺は武装してなければ大丈夫だろう」

昼間に、弁当のバスケットを下げたアスナと連れ立って家を出た。向こうでオブジェクト化すればいいだろうと思ったが、変装の一環(いっかん)
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