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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
釣り自慢
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人から隠れるために移ってきた場所だが、しかしこの男ならゴシップには興味があるまいと判断する。
「……醤油にごく似ている物に心当たりがありますが……」
「何ですと!」
ニシダは眼鏡の奥で眼を輝かせ、身を乗り出してきた。
__おいおい、まさか。
俺は何となく嫌な予感がした。
この世界の煮魚と刺身を食べてみたい、というニシダを伴って帰宅したキリトを出迎えたアスナは、少し驚いたように眼を丸くしたがすぐに笑顔を浮かべた。
「おかえりなさい。それと、いらっしゃいネザー君」
ただ笑顔で、2人を迎えてくれた。
そう、正直に言うと俺もSAO世界の刺身や煮魚を食べたいと思い、キリトの誘いに乗ってしまったのだ。だがキリトの下手な釣り自慢の誘いに乗った時よりは全然マシだと思い、アスナの待つ22層の家に来たのだ。
アスナはニシダに眼を向けると、キリトに訊ねた。
「それで、そちらの人は?」
「ああ。こちら、釣り師のニシダさん。で……」
ニシダに向き直ったキリトは、アスナをどう紹介したものか迷って
口
(
くち
)
籠
(
ご
)
もった。するとアスナはニヤリと老齢の釣り師に微笑みかけ、
「キリトの妻のアスナです。ようこそいらっしゃいました」
元気よく頭を下げた。
ニシダはポカンと口を開け、アスナは見入っていた。地味な色のロングスカートに麻のシャツ、エプロンとスカーフ姿のアスナは、《血盟騎士団》時代の
凛々
(
りり
)
しい剣士姿とは違えどその美しさに変わるところはない。
何度か
瞬
(
まばた
)
きした後、ようやく我に返った様子のニシダは、
「い、いや、これは失礼。すっかり見とれてしまった。ニシダと申します、厚かましくお招きに預かりまして……」
頭を掻きながら、わははと笑う。
ニシダから受け取った大きな魚を、アスナは料理スキルを
如何
(
いかん
)
なく発揮して刺身と煮物を調理し、食卓の並べた。例の自作醤油の香ばしい匂いが部屋中に広がり、ニシダは感激した
面
(
おも
)
持
(
も
)
ちで鼻を 盛さかんにひくつかせた。
魚は
淡水
(
たんすい
)
魚というよりは、
旬
(
しゅん
)
の
鰤
(
ぶり
)
のような脂の乗った味だった。ニシダに言わせるとスキル値95はないと釣れない種類だそうで、3人とも会話もそこにしばらく夢中で
箸
(
はし
)
を動かし続けた。
たちまち食器は空になり、勢いお茶のカップを手にしたニシダは
陶然
(
とうぜん
)
とした顔で長いため息をついた。
「……いや、
堪能
(
たんのう
)
しました。ご馳走様です。しかし、まさかこの世界に醤油があったとは……」
「自家製なんですよ。よかったらお持ち下さい」
アスナは台所から小さな
瓶
(
びん
)
を持ってきてニシダに手渡した。
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