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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
顧みられる心
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して全部投げ出すのも無責任ですしね」

ユリエールがそっとシンカーの手を握り、言葉を継いだ。

「軍が蓄積した資財は、メンバーだけでなく、この街の全住民に平等に分配しようと思っています。今まで、酷い迷惑をかけてしまいましたから……。サーシャさん、ごめんなさい」

いきなりユリエールとシンカーに深々と頭を下げられ、サーシャはメガネの奥で眼をぱちくりさせた。慌てて顔の前で両手を振る。

「いえ、そんな。軍の良い人達にはフィールドで子供達を助けてもらったこともありますから」

率直(そっちょく)なサーシャの物言いに、再び場に(なご)やかな笑いが満ちた。

「あの、そういえば……」

首を傾げて、ユリエールが言った。

「ネザーさんはどうしたんですか?昨日から1回も顔を見ていないのですが……」

アスナとキリトは顔を見合わせた後、少々苦笑いで言った。

「実は……わたし達の知らない間に、上の層へ帰っちゃったみたいで……」

それを聞いた途端、ユリエールとシンカーはお互いガッカリとした表情になった。

「そうですか」

「ネザーさんの噂は、私の耳にも何度か届いていましたが……昨日の一件を聞いて、決して悪い人ではないとわかりました。会ってお礼を言えなかったのが、残念で仕方ありません」

キリトとアスナは、すまない、という顔で2人を見た。

例えネザーに、ユリエールとシンカーに会ってあげて、と頼んでも本人が素直に了承するとは思えない。普段下の層に現れることもないため、ユリエールとシンカーが会える機会はないだろう。このことは2人に決して言わない方がいいかもしれない、という罪悪感に押し潰されそうだった。

すると、ユリエールが再び言った。

「そういえば、もう1人……ユイちゃんはどうしたんですか?」

ネザーのことを訊かれた時と違い、キリトとアスナは顔を見合わせ、微笑しながら答えた。

「ユイちゃんは……お家に帰りました」

右手の指をそっと胸元に持っていく。そこには、昨日まではなかった、細いネックレスが光っていた。華奢(きゃしゃ)な銀鎖の先端には、キリトがカーディナルシステムから切り離したユイの心のクリスタルだった。涙滴型のクリスタルを撫でると、わずかな (ぬく)もりが指先に沁みるような気がした。





別れを惜しむサーシャ、ユリエール、シンカーと子供達に手を振り、転移ゲートから第22層に帰ってきたアスナとキリトを森の香りがする冷たい風が迎えた。わずか3日の旅だったが、随分長く留守にしてきた気がして、アスナは胸いっぱいに空気を吸い込んだ。

なんという広い世界だろう__。

アスナは改めてこの不思議な浮遊世界に思いを()せた。無数にあるといっていい層1つ1つに、そ
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