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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
顧みられる心
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のでした。喜び……安らぎ……でもそれだけじゃない……。この感情はなんだろう、そう思ってわたしはその2人のモニターを続けました。会話や行動に触れるたび、わたしの中に不思議な欲求が生まれました。そんなルーチンはなかったはずなのですが……。あの2人の傍に行きたい……直後、わたしと話をしてほしい……。少しでも近くにいたくて、わたしは毎日、2人の暮らすプレイヤーホームから一番近いシステムコンソールで実体化し、彷徨いました。その頃にはもうわたしはかなり壊れてしまっていたのだと思います……」

「それが、22層の森……」

ユイはゆっくりと頷いた・

「はい。キリトさん、アスナさん……わたし、ずっと、お2人に……会いたかった……森の中で、お2人の姿を見た時……すごく、嬉しかった……。おかしいですよね、そんなこと、思えるはずないのに……。わたし、ただのプログラムなのに……」

涙をいっぱいに(あふ)れさせ、ユイは口を(つぐ)んだ。アスナは言葉にできない感情に打たれ、両手を胸の前でギュッと握った。

「ユイちゃん……あなたは、本当のAIなのね。本物の知性を持っているんだね……」

(ささや)くように言うと、ユイはわずかに首を傾けて答えた。

「わたしには……わかりません……。わたしが、どうなってしまったのか……」

その時、今まで沈黙していたキリトが一歩進み出た。

「ユイはもう、システムに操られるだけのプログラムじゃない。だから、自分の望みを言葉にできるはずだよ」

柔らかい口調で話し掛ける。

「ユイの望みは、なんだい?」

「わたし……わたしは……」

ユイは、細い腕をいっぱいに伸ばした。

「ずっと、一緒にいたいです……パパ、ママ……!」

アスナは溢れる涙を拭いもせず、ユイに駆け寄るとその小さな体をギュッと抱きしめた。

「ずっと、一緒だよ、ユイちゃん」

少し遅れて、キリトの腕もユイとアスナを抱え込む。

「ああ……。ユイは俺達の子供だ。家に帰ろう。みんなで暮らそう……いつまでも……」

だが、未だ後ろに立ったままの俺が、顔を俯けながら言った。

「……それは無理だ」

「「え?」」

突然の言葉に、キリトとアスナは声を揃えた。

「ユイの話が全て事実なら……もう手遅れだ」

アスナが戸惑ったような声で訪ねる。

「手遅れって……どういうこと……?」

ユイに視線を向け直した途端、説明が始まった。

「わたしが記憶を取り戻したのは……あの石に接触したせいなんです」

ユイはへ部屋の中央に視線を向け、そこに鎮座(ちんざ)する黒い立方体を小さな手で指差した。

「さっきアスナさんがわたしをこの安全地帯に退避させてくれた時、わたしは偶然あの石に触れ、
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