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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
捜索
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アスナは返す言葉がなかった。確かにこの男の言うように、対モンスター戦には死の危機が常に付きまとう。だが現在のアスナの感覚では、それは現実世界で道を歩く時、交通事故に()うのを四六時中(しろくじちゅう)に心配するようなもので、怖がっても始まらないと言うしかない。

SAO内での死に対する自分の感覚が鈍磨(どんま)しているのか、男がナーバスすぎるのか、咄嗟(とっさ)に判断することができずにアスナは立ち尽くした。多分、どちらが正解というものではないのだろう。《はじまりの街》では、きっと男の言うことが常識なのだ。

アスナの複雑な心境(しんきょう)など気にも留めない様子で、男は喋り続けた。

「で、何だっけ、人がいない理由?別にいない訳じゃない。みんな宿屋の部屋に閉じこもってるのさ。昼間は《軍》の徴税(ちょうぜい)部隊に出くわすかもしれないからな」

「ちょ、徴税(ちょうぜい)……。それは一体何なの?」

(てい)のいいカツアゲさ。気をつけろよ、奴らよそ者だからって容赦しないぜ。おっ、1個落ちそうだ……。話はこれで終わりだ」

男は口を(つぐ)むと、真剣な眼差しで上空を睨み始めた。アスナはペコリと頭を下げると、今の会話中ずっと俺とキリトが沈黙していたことに気づき、後ろを振り返った。

そこにあったのは、真剣な眼つきで黄色い木の実を見据えているキリトと、ただ腕組みをしたままアスナの方に眼を向けていた俺の姿だった。どうやらキリトは、次に落ちる実を全力で奪取するつもりらしい。

「やめなよもう!」

「だ、だってさ、気になるじゃん」

「そう思うのはお前だけだ」

アスナはキリトの襟首(えりくび)を掴むと、ズルズル引きずりながら歩き始め、俺はその後をついて行くだけだった。

「あ、ああ……うまそうなのに……」

未練たらたらなキリトの耳を引っ張って無理矢理振り向かせるアスナ。

「それより、東7区ってどの辺?協会で若いプレイヤーが暮らしてるみたいだから、行ってみよう」

「ああ」

「……はぁい」

すっかり眠りに落ちてしまったユイを受け取ったキリトは、しっかり抱き、俺とアスナはマップを覗き込みながら歩くキリトの横で速度を合わせた。





相変わらず人影の少ないだだっ広い道を、南東に目指して数十分も歩くと、やがて広大な庭園めいたエリアに差し掛かった。色づいた広葉樹(こうようじゅ)の林が、初冬の寒風の中わびしげに梢を揺らしている。

「えーと、マップではこの辺が東7区なんだけど……。その教会ってのはどこだろう?」

「あそこだ」

俺は、道の右側に広がる林の向こうに一際(ひときわ)高い尖塔(せんとう)を見つけ、視線でその方向を示した。青灰色の屋根を持つ塔の天辺に
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