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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
迷子
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かない俺に、楽しい思い出があっては邪魔になる。空回りする感情は凶器でしかない。

この場の空気を入れ替えるように、キリトは寝息を立て始めたユイを見ながら言った。

「とりあえず、俺達にできることをしよう」

「まず、《はじまりの街》にこの子の親とか兄弟とかがいないか探しに行くんだ。これだけ目立つプレイヤーなら、少なくとも知ってる人間がいると思うし……」

「………」

もっともな意見だった。しかしアスナは、自分の中にこの少女と別れたくないという感情があることに気づいていた。夢にまで見たキリトとの2人だけの生活だったが、なぜかそれが3人になることに抵抗はない。まるでこのユイという少女が自分とキリトの子供のように思えるからだろうか__とそこまで漠然(ばくぜん)と思考してからハッと我に返り、アスナは耳まで赤くなった。

「……?どうかしたの?」

「な、なんでもないよ!!」

訝いぶかしむキリトに向かってブンブンと首を振る。

「そ、そうだね。ユイちゃんが起きたら、《はじまりの街》に行ってみよう。ついでに新聞の訪ね人コーナーにも書いてもらおうよ」

キリトの頭を見ることができず、早口で言いながらアスナは手早くテーブルの上を片付けた。椅子で眠るユイに眼をやると、もう完全に熟睡しているようだったが、気のせいか、その寝顔は昨日とは違いどことなく安らかなものに見えた。

ベッドに移動させたユイは午前中ずっと眠り続け、また昏睡(こんすい)してしまったのではないかとアスナはやや心配したのだが、幸い昼食の準備が終わる頃に眼を覚ました。

ユイのために、普段はほとんど作らない甘いフルーツパイを焼いたのだが、テーブルについたユイはパイよりもキリトとレギンが食しているマスタードたっぷりのサンドイッチに興味を示した。

「ユイ、これはすごく辛いぞ」

ユイの視線に気づいたキリトに注意を言われた途端、ユイは少しだけ顔が苦くなったが__。

「う〜……。パパとおんなじのがいい」

「そうか。そこまでの覚悟なら俺は止めん。何事も経験だ」

キリトがサンドイッチを1つ差し出すと、ユイはためらわず小さな口を精一杯開けてカブリと噛み付いた。

キリトとアスナが固唾(かたず)を呑んで見守る中、難しい顔で口をモグモグさせていたユイは、ゴクリと喉を動かすとニッコリ笑った。

「おいしい」

「中々根性のある奴だな」

キリトも笑いながらユイの顔をグリグリと撫でる。

「晩飯は激辛フルコースに挑戦しような」

「もう、調子に乗らないの!そんなもの作らないからね!」

だが《はじまりの街》でユイの保護者が見つかれば、ここに帰ってくる時はまた2人だけの生活に逆戻り。そう思うとアスナの胸中には一抹(いちまつ)の寂しさ
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