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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
迷子
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ゆっくり顔を上げると、キリトの顔を見て、恐る恐る、という風に眼を開いた。

「……パパ」

次いでアスナを見上げて、言う

「あうなは……ママ」

アスナの体が抑えようもなく震えた。本当の両親と間違えているのか、あるいはこの世界にはいない親を求めているのかわからなかったが、そんな理屈を考えるより先に、アスナは込み上げてくるものを必死に抑えつけ、微笑みと共に頷いていた。

「そうだよ……ママだよ、ユイちゃん」

それを聞くと、ユイは初めて笑顔を浮かべた。切り揃えた前髪の下で、表情の(とぼ)しかった黒い瞳がキラリと(またた)き、一瞬、人形のようなその整った顔に生気が戻ったように見えた。

「ママ!」

こちらに向かって差し出された手を見て、アスナは大きく胸を波打たせた。

「うっ……」

こぼれそうになった嗚咽(おえつ)を懸命に(こら)え、どうにか笑身を保ち続ける。椅子からユイの小さな体を持ち上げ、しっかりと抱きながら、アスナは色々な感情が混じり合った涙が一粒溢れ、頬に伝うのを感じていた。

……父さん、母さん……。

その光景を見て、俺は脳裏で両親のことを呟き、更に懐かしい思い出までもが浮かんだ。

楽しいと感じられる思い出のはずなのに、今では忌まわしき記憶のように感じられた。





ホットミルクを飲み、小さな丸パンを1つ食べると、ユイは再び眠気を覚えたらしく椅子の上で頭を揺らし始めた。

テーブルの向かい側でその様子を見ていたアスナは、グイと両眼をひと拭きすると隣の椅子に腰掛ける俺とキリトに視線を向けた。

「わたし……わたし……」

口を開くが、言いたいことをなかなか形にすることができない。

「ごめんね、わたし、どうしていいかわかんないよ……」

キリトはいたわるような眼差しでしばらくアスナを見つめていたが、やがてぽつりと言った。

「……この子が記憶を取り戻すまで、ずっとここで面倒みたいと思ってるんだろ?気持ちは……わかるよ。俺もそうしたい。でもな……ジレンマだよな……。そうしたら当分攻略には戻れないし、その分この子が解放されるのも遅れる……」

「うん……それは、そうだね……」

「………」

ユイという、謎に満ちた少女を何とか助けようとしてる2人を見ていて、心の奥底に封印していた《彼》との思い出が俺の眼に浮かび上がってきた。

唯一無二の親友である彼は、見知らぬ俺を自分の自宅へ運び、瀕死の俺を救ってくれた。しかし、いつしか俺はその思い出を心の底にしまい、二度と開けることのないパンドラの箱として封印した。だがその箱は俺の思考状態によっていつでも開けることが可能であるため、完全な封印を施せてはいない。

全てを忘れ、全てを戦いに委ねるし
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