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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
朝露の少女
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アスナは毎朝の起床(きしょう)アラームを7時50分にセットしている。

なぜそんな中途半端(ちゅうとはんぱ)な時間なのかというと、キリトの起床時刻が8時丁度だからだ。10分速く眼を覚まし、ベッドに入ったまま、隣で眠る彼を見ているのが好きなのだ。

今朝もアスナは、木管楽器(もっかんがっき)の柔らかな音色によって目覚めた後、そっと体をうつ伏せにして、両手で頬杖(ほおづえ)を突きながらキリトの寝顔を眺めていた。

恋したのが半年前。攻略パートナーとなったのが2週間前。結婚して、ここ22層の森の中に引っ越してきてからはわずか6日しか経っていない。誰よりも愛する人だが、実の所、キリトに関してはまだまだ知らないことも多い。それは寝顔1つ取っても言えることで、こうして眺めていると、だんだん彼の年齢がわからなくなってくる。

少しばかり(しゃ)に構えた、飄々(ひょうひょう)とした物腰のせいで、自分より少し年上かなと普段は思っている。しかし深い眠りに落ちている時のキリトには、無邪気と言っていいほどのあどけなさがあるため、なんだか遥かに年下の少年のようにも見えてしまう。

歳くらい、訊いてもかまわないだろうとは思う。いかに現実世界の話を持ち出すのが禁忌(きんき)とは言え、2人はもう夫婦なのだ。歳どころか、現実に戻ってからまた出会うためには、本名、住所から連絡先まで伝え合っておくべきなのは事実だ。

しかし、アスナは中々それが言い出せないでいる。

現実世界のことを話した途端、ここでの《結婚生活》が仮想の、薄っぺらなものになってしまいそうで怖いからだ。アスナのとって今何よりも大切な、唯一の現実はこの森の家での穏やかな日々であって、例えこの世界からの脱出が叶わぬまま現実の肉体が死を迎えることがあるとしても、最後の瞬間までこの暮らしが続いてくれるなら悔いはない。

だから、夢から覚めるのは、もう少し後に__。そう思いながら、アスナはそっと手を伸ばし、眠るキリトの頬に触れた。

そっと息をつきながら、アスナは身を乗り出し、キリトの体に腕を回した。かすかな声で(ささや)きかける。

「キリト君……大好きだよ。ずっと、一緒にいようね」

その途端、キリトはわずかに身動きし、ゆっくりと(まぶた)を開けた。2人の視線が至近距離で交錯(こうさく)する。

「わっ!!」

アスナは慌てて跳び退(しさ)った。ベッドの上にぺたんと正座して、顔を真っ赤に染めながら言う。

「お、おはよ、キリト君。………今の……聞いてた?」

「おはよう。今のって、何?」

上体を起こし、あくびを噛み殺しながら聞き返すキリトに向かって、アスナは両手をぶんぶんと振った。

「う、ううん。なんでもない!」





目玉焼きと黒パン、サラ
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