暁 〜小説投稿サイト〜
Sword Art Rider-Awakening Clock Up
朝露の少女
[4/10]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
、キリト君はパンを切ってね」
手早くフィッシュ・バーガーの弁当をランチボックスに詰め、2人が家を出た時は午前9時となっていた。
庭の芝生に降りたところで、アスナはキリトを振り返ると言った。
「ね、肩車して」
「か、かたぐるま!?」
素
(
す
)
っ
頓狂
(
とんきょう
)
な声でキリトが聞き返す。
「だって、いつも同じ高さから見てたんじゃつまんないよ。キリト君の筋力パラメータなら
余裕
(
よゆう
)
でしょ?」
「そ、そりゃそうかもしれないけどなぁ……。お前、いい歳こいて……」
「歳は関係ないもん!いいじゃない、誰が見てるわけでもないし」
「ま、まあいいけどさぁ……」
キリトは呆れたように首を振りながらしゃがみ込み、背中をアスナに向けた。スカートをたくし上げ、その肩をまたぐように両足を乗せる。
「いいよー。でも後ろ見たら引っ
叩
(
ぱた
)
くからね」
「なんか理不尽じゃないか……?」
ぶつくさ言いながらキリトが身軽な動作で立ち上がると、それにつれて視点が一気に上昇した。
「わあ!ほら、ここからもう湖が見えるよ!」
「俺は見えないよ!」
「じゃあ、後でわたしもやってあげるから」
「………」
脱力したように
項
(
うな
)
垂
(
だ
)
れるキリトの頭に手をかけ、アスナは言った。
「さ、出発進行!」
てくてくと歩き出したキリトの肩の上で
屈託
(
くったく
)
なく笑いながら、アスナは痛いほどの、2人で暮らす日々への愛おしさを感じていた。自分は今、17年の人生の中で一番《生きている》と、疑いもなくそう思えた。
キリトがアスナは肩車したまま小道を歩き出して数十分後、22層に点在する湖の1つに差し掛かった。穏やかな陽気に誘われてか、朝から数人の釣り師プレイヤーが
湖水
(
こすい
)
に糸を垂らしている。小道は湖を囲む丘の上を通り、左手に見える
湖畔
(
こはん
)
まではやうやら皆笑顔で、中には声に出して笑っている者もいる。
「……誰も見てなくないじゃん!!」
「あはは、人いたねー。ほら、キリト君も手を振りなよ」
「絶対に嫌だ」
文句を言いながらも、キリトはアスナを下ろそうとはしなかった。内心では彼も面白がっているのがアスナにはわかる。
やがて道は丘を右に下り、深い森の中へと続く。杉に似た巨大な
針葉樹
(
しんようじゅ
)
がそびえる間を縫って、ゆっくりと歩く。
葉
(
は
)
擦
(
ず
)
れの囁き、小川のせせらぎ、小鳥のさえずりが晩秋の森景色に美しい
伴奏
(
ばんそう
)
を添えている。
アスナは、いつもより近くに見える木々の
梢
(
こずえ
)
に視線を向けた。
「大きい木だねぇー。ねえ、この木、登れるのかなあ?」
「うーん……」
アスナの問いに、キリトはしばし考え込む。
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ