第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:ヒトタラシメルモノ
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の減少幅が異常なほどに大きい。耐毒スキルによる軽減数値を鑑みても、常軌を逸する威力を秘めていることが伝わってくる。じわじわと削れるHPはやがて2割を蝕み、そしてあろうことか、新たにもう二つのダメージ毒アイコンが思い立ったようにポップする。SAOのシステムを無視した《突発的な状態異常の発生》と、加えて《状態異常の重複発生》を目にして、PoHは再びスレイドを見る。
「………面白い」
ピニオラを捉えるPoHは、こうしている間にもHPを損耗させている。
対するスレイドは膝を立てていつでも駆け出せる態勢に移行していた。
PoHの行動如何では、スレイドは確実に一矢報いるべく疾駆するだろう。ピニオラやみことを凶刃に掛ける瞬間は彼にとっての好機であり、クリスタルによる回復や転移を図ろうものならボイスコマンドを阻害して攻撃に転じることは容易に想像できる。裏を返せば、それしか手は残されていないのだ。その予測を裏付けるように、彼の目はピニオラでもみことでもなく、ただPoHにのみ向けられている。殺意や害意を込めた視線の外側は驚くほどに無関心で、それこそどうなっても構いはしないという意思さえ伝わってくる。両腕を失いながらもスレイドにとっての勝利条件はあくまでも《PoHの殺害》の一点に向けられているのだから。
やがて、三つもの状態異常はHPを残り3割というところまで削る。
頭を振り、乾いた笑いを零すと意外にも得物を腰のホルダーに納めては、乱雑にピニオラを捨てて転移結晶を手に数歩後退ってみせた。
「このまま続けても面白そうだが………残念、そろそろ潮時だ」
攻略組の侵攻速度と、自身のHP残量。加えて発生条件の不明なダメージ毒への警戒。
幾重の意味合いで告げられたであろう引き際に、スレイドはただ無言で応じる。しかし、害意が揺らぐことはなく靴底が床を擦る音が僅かに鳴った。
両名の睨み合う視線も音を合図に途切れ、PoHは笑みを浮かべて青い転移エフェクトに飲み込まれてゆく。
同時にスレイドが駆けた。両腕も未だ再生されないまま疾走するスレイドは構うことなくその体躯を突如として床に向けて沈み込むように屈め、床に転がる剣の柄を口で捕らえる。
顎から軋む音を響かせて剣の柄を噛み絞り、左の肘で地面を打つと上半身は再び浮き上がる。その上昇に併せて振り抜かれた刃は石造りの床を滑り、大気を裂いて響く摩擦音の波は緩やかに静まり、最後には青い燐光に晒されるスレイドが残された。
剣が滑り落ちる音も、膝から頽れる音も、痛いほどの静寂が飲み込んでしまった。その光景は獲物を屠った狩人ではなく、翻弄された敗者の佇むものであったに相違ない。
脅威が過ぎ去り、取り残されたピニオラは一にも二にも無くみことを確保する。アバターが
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