第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:ヒトタラシメルモノ
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て良いと思うぜ」
嗜虐的な嘲笑が零れ、荒っぽく掴まれたピニオラの首に向けて友斬包丁が添えられる。
ドロップ品の中では俗称でいう《魔剣》クラスに相当する逸品だ。ピニオラのステータスでは耐えられる道理もない。抵抗しようにも、自分に勝ち目があるわけでもない。既に行く末は決しているのだ。
半ば無理矢理に思考を諦念で満たし、みことから目を背けて唇を噛む。そもそも都合が良過ぎたのだ。誰かの命を深い意味もないまま、ただ思うさま奪い弄んで、幸せになれる道理などないというのに。それでもピニオラは、望んでしまっていた。
――――夢を見る資格さえないというのに、わたしったらお馬鹿さんですよねぇ………
言い聞かせるように、呟く。
きっと、掠れるような呻きにしかなっていなかっただろうが、誰かに向けた言葉でもない。
自分という愚者へ、せめて手向けと零した乾いた嘲笑。身の程を弁えなかった不遜への、当然の報いだと一笑を零すくらしか、ピニオラには出来なかった。
だが、そう思い、自ら燻る夢や希望を踏みにじる度に、眦から熱い何かが零れ落ちようとする。
――――でも、もう一回だけ、みことさんとお出掛けしたかったなぁ………
それでも、叶うことのない想いが巡り、胸が苦しくなる。
どうしても消えることのない光がちらつき、奇跡を祈ってしまう。
もっと一緒に居たかった、もっと色々な思い出を作りたかったと、求めてしまう。
叶うことのない願いばかりが巡り、胸を締め付ける。
しかし、最期の走馬灯のように駆け抜ける記憶と願いは途絶えることはなかった。
その代わりに、ただただ細く、弱々しい嗤い声が床から響く。気付けば、PoHもその声の主を見据えたまま動かない。ピニオラもまた、恐る恐るうつ伏せに倒れたスレイドを見遣った。
「勝利の余韻、ってやつか。悠長だな」
左の肘を突き、ゆったりと上体を起こす。
切断や剥離で欠損した両腕と、攻撃を凌いだ余波で右目に手酷い痕が残るものの、それ以上のダメージの発生はないようで、回復させようとする意思はないらしい。そもそも、そんな間隙をPoHが見逃すなど在り得ないのだが。
どこまでも空しく聞こえるスレイドの言葉は、PoHに突如として現れた状態異常によって意味を為す事となる。
「………オイ、これは………マジか………」
奇しくもPoHと対面する形となっていたピニオラは、その驚愕を含んだ声の真意に気付く。
驚愕で言葉を詰まらせるPoHのHPバーには、ダメージ毒のアイコンが点滅していた。
しかし、この毒は突発的に発生したものだ。これまでの戦闘中に見落としではない。加えて通常の毒によるダメージにしてはHP
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