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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五話 パンドラ文書
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ューに答えているのです。大尉は帝国の陰謀を見破った英雄で、両親を貴族に殺され本人も殺されかけて亡命した悲劇の英雄と言う事になっています。

私は大尉の素顔を知っているからちょっと複雑な気分。友人達からも“ヴァレンシュタイン大尉ってどんな人”って聞かれるけど根性悪でサドとはちょっと言えません。おかげで“まあ、良い人よ”と当たり障りのない答えを返しています。

大尉はマスコミが嫌いみたいです。仕事が終った後は輸送担当課に疲れたような顔をして戻ってきます。そして溜息をついて水を飲むのです。うんざりしているのでしょう。

今日はキャゼルヌ大佐からヴァレンシュタイン大尉と共に私室に来るようにと言われています。私はちょっと気が重い、なんと言っても例の伝言はバグダッシュ大尉からキャゼルヌ大佐に行っているのです。大佐は私達に何の隔意も表さないけど本当はどう思っているか……。

大尉が部屋をノックして中に入りました。私も後に続きます。中には先客が居ました。後姿しか見えませんが未だ若い男性のようです。

「キャゼルヌ大佐、お客様のようですのでまた後で来ます。中尉、出直しましょう」
「はい」
帰ろうとするとキャゼルヌ大佐が声をかけてきました。

「二人とも気にしなくていい」
「?」
「ヴァレンシュタイン大尉、大尉は既に面識が有ったな。ミハマ中尉、紹介しよう、ヤン中佐だ」

大佐の紹介と共に後姿の男性が振り返りました。中肉中背の若い男性です。これがヤン中佐? エル・ファシルの英雄なの? ヴァレンシュタイン大尉とは違う、本物の英雄に出会えた。今日は凄くラッキー。

大尉を見ると大尉も嬉しそうに笑顔を浮かべています。
「ヤン中佐、久しぶりです」
「そうだね、久しぶりだ」

ヤン中佐とヴァレンシュタイン大尉が話しています。大尉は嬉しそうなのに中佐は何処となく構えるような表情です。大尉も笑みを浮かべるのを止めました。この二人、顔見知りのようだけど一体何が有ったのか? 部屋に何となく重い空気が落ちました。大尉、貴方一体何をやったんです?


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