第十話「少女が見た青い雷光」
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ちろん、明日の予定はもう決まっている。
やや、ヒラヒラした青いワンピースと髪にも青いリボンをした、どこぞの童話少女らしきおしゃれ着でシャルロットは鼻歌を口ずさみながら、可愛らしいバスケットを片手に教会へ向かった。
「神父様!」
「おやおや……」
可愛らしいオシャレな少女に、微笑む神父はお目当ての王子様の元へ彼女を案内した。
教会の席の一角で青いヨーヨーを回している一人の青年の姿が居た。
青いパーカーに黒いズボンを纏うその彼は、そのヨーヨーで遊んでいると、ふと歩み寄ってくる誰かの気配に気づき、ヨーヨーから視点を変えた。
「……?」
「こんにちは! お体の具合はいかが?」
「……あんたか? 僕を、ここまで連れてきた人ってのは」
「うん、そうだよ?」
「そうか、借りができたな?」
と、言い終えると青年は再びヨーヨーを掴むと、それをポケットへしまい込んだ。
「アンタ、名は?」
「シャルロット、シャルロット・デュノアだよ? あなたは?」
「ユーマだ。ユーマ・ライトニング」
「へぇ! カッコいい名前だね?」
「ああ、まあね?」
と、ユーマは席に座ると、その隣を寄り添うようにシャルロットが座ってきた。
「な、なに……?」
彼女の腕が自分の腕に当たって、ユーマは少しドキッとした。
それからというもの、シャルロットは積極的に話してきて、それにユーマは一言、二言で、返答する。施設の人間や親友以外の、それも女の子と話すことに慣れない彼だが、次第にシャルロットの笑顔と優しさにひかれて、気づけばジョニー同様にシャルロットへ懐いていたのだった。
二人との会話が時間が過ぎることを忘れ、気づいた時にはすでに夕暮れ時まで差し掛かっていた。
「ああ……もう行かなくちゃ」
「もう、行くのか?」
ユーマは、やや寂しそうな顔をして席から立ち上がったシャルロットを見上げた。
「ごめんね? でも、また明日来ようと思うの。いい……かな?」
「ああ、いつでも来いよ? 俺、明日もここで待ってるから」
それからというもの、シャルロットは毎回おしゃれ着を着つつ、彼女を待ちわびるユーマの元へ通い続けた。
二人にとって、唯一の安らぎが互いの何気のない会話や愚痴を言いあい、笑いあうことだった。しかしそれが徐々に二人の親睦を深めつつあったのであり、シャルロットはユーマの、やや幼児性ながらも明るく無邪気な、そして勇敢で怖いもの知らずな青年らしさに魅かれ、ユーマはシャルロットの母性と家庭的な優しさ、そして何よりもこんな自分の傍にいつもいてくれることに魅かれていった。
次第に翌日の再開を待ち遠しく感じる二人。シャルロットはベッドの上でもそれが忘れられず、ユーマも教会の長い席に毛布に包まりながら教会の深い天井を見上げた。
そんな、ひと月が終わりを迎えようとしていた
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