第十話「少女が見た青い雷光」
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の勇姿を見ていたいが、仕方がなく彼女はトボトボと競技場を出ていった。
まだ、昼間ゆえに今日は家のことなど忘れて門限までの間は思う存分遊ぼう。シャルロットは、ファイトを見終わった後でもパリ市内を散歩した。
「あ……」
やや人気の少ない歩道を歩いたところで、彼女の足が自然と立ち止まった。そこには、母と共に通った思い出の教会が少々薄気味悪く町中の隅に佇んでいた。シャルロットは、そのまま行き先もないまま、ただ単にブラブラしていることしかないので、久しぶりに思い出の教会へ足を踏み入れた。
「誰か、いませんか?」
教会内部はほこりを被った薄暗い空間であり、入るのには少し勇気が必要だった。別に信じてはいないが、よくあるホラー映画などで背後から誰かの手が自分の肩を掴みかかってくるのではないかという予想を浮かべてしまうのだ。それでも彼女は胸に手を添えて教会の奥に称えられるイエス・キリストの十字架像を眺めた。
「……」
そこで、彼女は何事もなく膝を付き、神へと祈りを捧げた。願いは唯一つ、この地獄の生活から逃れて新たな生活を手にして幸せを掴みたい。そして、自分を愛してくれるジョルジュのような理想の王子様と出会い、最後にこの女尊男卑の世界を終わらせてもらいたい。そう祈ったのである。
彼女は、ISと女尊男卑を忌嫌う女性の中では数少ない中立派の人間なのだ。ISさえなければ、娘である自分を物のようにしか考えていない父親や目の敵にする正妻の元で傷つきながら暮らすことはなかったであろう。そんな男のもとで暮らすよりも孤児院で暮らしていた方が何倍もマシであったはずだ……
そして何よりも、身も心も傷つきながら生きてきた自分からして、IS社会の差別の風習により自分以外の人達がこれ以上苦しむ姿など見たくなかった。
「お客様ですか?」
優し気な声と共に教会の奥の扉から出てきたのは大柄な神父であった。
「し、神父様?」
「おや……これはまた可愛らしいお嬢さんだ」
「ごめんなさい、いきなり入ってしまって……」
「教会とは皆が心をいやしに来る場所でもあります。ここで、日々の苦しみを洗い流していかれなさい? お嬢さん」
「あ、ありがとうございます……」
優しい神父の言葉に甘えて、彼女は近くの席に座って十字架に祈り始めた。それから、神父は久しぶりの来客に喜び、クッキーを焼いてシャルロットらにふるまった。
「久しぶりのお客様です。ささ、お上がりなさい?」
「うわ〜! おいしそう……」
神父は、何かと彼女に優しく接し、ティータイムを楽しみながら彼女の相談に乗ってやった。
「……それは、さぞかしお辛い日々を送られているのですな?」
「別に、私は気にはしていません。でも、こんな社会は嫌いです」
「ほう……」
「私は、これまで傷つきながらも神様の試練に耐え続けてきました。けど
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