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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四話 アルレスハイム星域の会戦
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考えるとサイオキシン麻薬の保管装置の設定は旗艦で行っていたのかもしれません。その設定を誤った、だから同時に気化した……」

「しかし、何故サイオキシン麻薬など積んでいる?」
「売るためでしょうね」
「売るだと?」
パストーレ中将が驚いています。

「ええ、代償は貴金属、アクセサリー、或いは情報……」
「情報!」
「サイオキシン麻薬を同盟に流す事で同盟の社会の弱体化を図る、代償として同盟の機密情報を入手する。一石二鳥ですね、帝国軍の極秘作戦か、或いはあの艦隊が勝手にやったのか……」

艦橋が静まり返りました。皆顔面を蒼白にしています。そんな中で中尉の表情だけが変わりません。いえ、むしろ微かに笑みを浮かべています。嫌な予感がするのは何故でしょう。
「早急に周辺の星域を警察に調べさせたほうが良いでしょう。おそらくは帝国軍からサイオキシン麻薬を購入しようとした人間がいるはずです」

パストーレ中将がナン少佐に視線を向けました。ナン少佐が慌てて何処かに連絡を取り始めます。多分近くの警察でしょう。
「しかし困りましたね。一体何処から情報を得ようとしていたのか?」
「どういうことだ? 何が言いたい」

唸るような声でパストーレ中将が問いかけました。不機嫌さが面に出ています。でもヴァレンシュタイン中尉は気にする様子もなく言葉を続けました。もしかすると面白がってる?

「敵の領内にサイオキシン麻薬を持ち込むなどキチガイ沙汰です。戦闘中に被弾して麻薬が漏れればそれだけで大変な事になる。にもかかわらず帝国軍はサイオキシン麻薬を持ち込んだ……」
「……」

「同盟軍に見つかる危険性が無いと思っていたのでしょう。おそらくは取引相手から同盟軍の情報を得ていた。問題は取引相手が誰から同盟軍の情報を得ていたかです。同盟軍の艦隊の配置を知る事ができる立場にある人間、或いはその周辺……」
「……」

誰も何も言いません、いや、言えません。顔面を蒼白にして沈黙しています。中尉の言うとおりなら軍の中枢部に情報漏洩者がいる事になります。重苦しい雰囲気の中、中尉だけが笑みを浮かべて話し続けました。

「今回のアルレスハイムへの哨戒任務は極秘だったと聞きました。情報源はその事を知る事ができなかった。当然取引相手も情報を得る事が出来なかった。そして今回の戦闘が起きた……」
「もういい!」

パストーレ中将が顔面を震わせています。
「小官は少し疲れましたので部屋で休ませてもらいます、宜しいでしょうか」
ヴァレンシュタイン中尉が退出を求めました。誰も何も言わないけど中尉は気にする事も無く艦橋から出て行きます。パストーレ中将が床を強く蹴るのが見えました。慌てて私は中尉の後を追いました。こんなところに居たくない……。


「中尉、待ってくださ
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