暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
凶兆
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女アスナのものではなく、これまで血盟騎士団副団長として攻略プレイヤーたちを率い続けてきた“閃光”のものだ。彼女の口調が敬語になっていることからも、その真剣さが読み取れる。

「外見、ハンドルネーム変更アイテムが発見された可能性があります」

 そのきつく引き結ばれた唇から漏れた声は、小さな声量ながらもかなりの衝撃をもってマサキの聴覚野を刺激した。その音と彼女の瞳からは遊びの色の一切が失せ、じっとりとした緊張感を滲ませている。

 SAOで外見や名前を変更するためのハードルは、他のオンラインゲームと比較してかなり高いと言える。他の大多数のゲームでは自らの分身たる仮想体(アバター)の容姿変更やネーム変更はかなり簡単に――課金によるアイテムの使用が必要なこともあるが――行えることが多いが、SAOでは現実の容姿がそのまま移植されるという性質上、自分の好きに顔や背格好を弄ることは不可能であり、ハンドルネームも原則変更できない。ただし、事前のキャリブレーションでカバーできない肌、瞳、髪の色や髪型についてはステータスメニューから自由に変更することができ、タトゥーやペイント、化粧なども可能だ。

 そして名前の変更に至っては、現在変更可能な手段は発見されていない。ただし、SAO開始からちょうど一ヶ月後、《はじまりの街》大聖堂にて一週間限定でシステム上の性と現実の性が違う、いわゆる「ネカマ」やあまりにも痛々しいハンドルネームをつけてしまったプレイヤー向けにハンドルネームと性別の変更が可能になるという救済措置が発表された。当時はまだ攻略組という組織自体が誕生していなかった上、ギルドも――システム上は――作ることができなかったため、誰がそれを管理するわけでもなく、また第一層のボス戦に向けて準備が進められている最中ということもあって特に干渉されることなく期間は終了した。
 後になってその性別、ハンドルネーム変更が犯罪に転用される危険性に気付いた大手攻略ギルドが当時実際に性別を変更したプレイヤーに聞き込み等の調査を行ったところ、変更できるのはゲーム開始から一度もオレンジになっていないプレイヤーに限られる、変更したプレイヤーが罪を犯した場合、そのプレイヤーの変更前の名前と変更後の名前が記録(ログ)として保存される等の厳しい制約があることが判明し、当時はまだ現在のレッドギルドのような高度な犯罪組織が存在しなかったこともあって犯罪に転用される可能性は低いと推定された。

 しかし、もし今後アバターの外見やハンドルネームを自由に変更できるアイテムや方法が発見された場合、アインクラッドにおける治安維持の大きな障害となり得るのは明白。そのため、攻略組や大手ギルド、情報屋の間では、そういったアイテムや方法が発見された際は速やかに情報を共有し対策を練るという協定が結ばれてい
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