決戦!? 堕天使vs黒騎士
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なく散る重圧の気が。
目測20m、15m、10m。刻々と間が詰まる。
勝負はおそらく――一瞬で着く!
「へぶっ!」
「……あ」
……本当に一瞬で着いてしまった。津島善子が不意にコケたのである。
「お、おい」
「うぅ……いたた……」
寄ってみると、彼女が右膝を擦りむいているのがわかった。大事には至っていないが、とりわけ軽い傷というわけでもない。目に涙を溜めて津島善子は痛がっている。堕天使にもダメージという概念が存在するらしい。
「……少々待機していろ」
我はそう言いつけ、一度通学バッグが放ってある地点まで行き、消毒液と絆創膏を持ち出して彼女の元へ戻った。
「刹那に痛覚が刺激されるだろうが、耐えるのだぞ?」
彼女の傷口に消毒液を吹きかける。ピリピリしたのだろう、津島善子は涙目のまま僅かに身を震わせた。だがしっかり我慢しているようだった。
「いい子だ」
「うっ、うるさい!」
調子にのって撫でてみると、津島善子は慌ただしくそっぼを向いた。色々と悔しく思う点があったのかもしれない。
「治癒完了。動いていいぞ」
我は絆創膏がちゃんと傷口を覆うように貼り付けてから彼女を解放した。応急処置する機会はこれまでにあまり経験がなかったので慣れておらず、案外時間を要してしまった。
「…………ありがと」
「ぬ!?」
と、津島善子が我に礼を言ってきた。照れくさいのだろうか、彼女の顔はルビィの如く紅い。
「何か言ったか?」
「……何も言ってないけど?」
「だが、今『ありがと』とかなんとか」
「なっ――聞こえてないフリしてたの!? 堕天の力であなたに災難が降りかかるようにするわよ!」
半乾きの涙を袖で拭って、脅迫を試みる津島善子。しかし威厳は皆無である。
「ククッ……笑いが込み上げてきたぞ」
「この〜〜っ!!」
――今日は実に、騒々しい日だ。
我は雲の流れ行く晴天を仰ぎ、苦笑するのだった。
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