暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
The biter is bit
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満点の星空。その夜闇の中に月の光を遮る複数の影が、綺麗な編列を組み、飛行していた。くさび形のそのフォーメーションは、渡り鳥の群れとも、ともすれば大きな爆撃機のようにも見える。

アルン高原。

央都アルンを中心とし、外側に環状山脈を囲む大草原地帯だ。

点々と村や林があったりするが、基本は見渡す限りの地平線である。解像度の問題で対角線上の山脈まで見えないので、視界の中は右から左までまっすぐ伸びる地平線に占められている。

フリーリアを出た、竜騎士(ドラグーン)狼騎士(フェンリル)合同隊は付近の、山脈を断つ渓谷――――《蝶の谷》からアルン高原に入っていた。

地を蹴り、風と成る巨狼のうねる背で、合同隊隊長を任されたヒスイは長い狐耳を撫でていた。

「んー、やぁっぱこんな季節に夜出掛けるモンやないなぁ。耳当てでも買うてくるんやった」

「あっ、たーいちょ。寒いんやったらこれ貸しましょか?あーしのお気に入り!」

「お、サンキュー」

隊員の一人から、やたらフワフワしている耳当てを借り、三角耳に当てる。ケットシーの中でもレアな狐耳は、通常の犬耳用の耳当てではいくらかはみ出てしまうが、ないよりはマシだ。

発生した仮想の温かみに目を細めながら、ヒスイはいまだに慣れない呼び名に口許を苦笑の形に歪ませる。

―――器やないゆー話……じゃないんだろうなぁ。

ただ単に、人を従えることに慣れていない、という訳ではない。

集団戦闘訓練や戦術の応用試験など、事務処理に追われる隊長の陰で隊を率いたことなど星の数ほどある。新アインクラッドへの攻略活動も含めれば、当人よりも指示していた機会は多かったかもしれない。

だが、それは自分の上に絶対的な存在としてあの少年がいるという前提があっての話だ。

今回だってそう。

終焉存在(マルディアグラ)》――――そう呼ばれる彼がここにいたら、今回の事件は全て解決する。

いや、こんなものは事件とも呼ばれないだろう。こんなことが些事に思えるような、それこそサーバの歴史単位での大事件でこそ、あの少年が本来のポテンシャルを発揮すべき場なのだから。

―――きっと、今回GGOへ行くのも、そーいう事なんやろなぁ。

きっと今頃、自分達の想像の埒外で戦っている。そんな気がしてならない。あの小さな背中には、そんな諸刃の剣のような危うさが積まれているのだから。

ヒスイはぎゅっと肩を縮こませて、マフラーの中に顔を埋めた。

けれど、たとえその内容を知っていたとしても、自分はその小さな背中を留めようとはしなかったと思う。きっと、それは他のフェンリル隊隊員達も、だ。

それはひとえに、フェンリル隊の全員がそういった事件の先で()()()|た《・
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