ターン67 覇王達の戦い(前)
[3/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は気のせいだったのかと首をひねりそうになる。もしここにいたのが僕1人だったら、そのまま見送っておしまいだったかもしれない。
『ハリーハリー、マスター。あの老人の言うことは、聞いておいて損はない。我々の疑問に対する最適解があるはずだからな』
「え、ええ……?」
わけがわからなかったが、チャクチャルさんがわかっているならそれでいい。どうせこの世のあらゆる難しい話は、僕にとっての専門外だ。素直に老人の後をついていくと、今にも倒れそうな足取りの癖に意外なほど早く歩いてゆく。
やがてそのまま数分ほど経つと、老人は突然向きを変えてもはや住む人もいなくなったのであろう見捨てられた家、屋根にも穴が開き壁も崩れかかっている廃墟の中にふらりと入っていった。もうどうにでもなれと、僕もその後に続き腐りかけた扉を押しのけて中に入る。待ち構えていた老人が、家の中に誰もいないことを確認するかのように辺りを見回してから口を開いた。
「……来たか。覇王を倒しに行くんだな?」
その声は先ほど僕に囁きかけたときと同様に力強く、どうやらこちらがこの老人の本性らしい。いよいよもって正体が掴めないが、ただ者ではなさそうな様子に無意識に全身に力が入る。
「あなたは一体、誰なんですか?」
老人の質問を無視してそう聞き返すと、包帯に覆われていない方の目が品定めするように僕を見て細まる。ややあって再び口を開くと、思ってもみなかった名前が飛び出てきた。
「私の名は、グラファ。かつて暗黒界の龍神とまで呼ばれた悪魔だ」
「グラファ……!」
名乗られて真っ先に思い出したのは、バックアップ・ウォリアーから聞いたこの世界の話だった。龍神グラファはつい先日まで暗黒界を統治していたが、例の彗星が空に現れると同時に突如姿を消したというあれだ。この老人が、本当にそのグラファだというのだろうか。
老人の真意を測りかねていると、地面に落ちた老人の影が急に伸びる。目の前の体は指一本動いていないのに、その影だけがより巨大に筋肉質に、そして禍々しい人型の龍の姿へと変化していった。それと同時に室内を小型の嵐のような風が吹き荒れ、かすかに残っていた家具が宙を舞う。こちらの表情が引きつったのを満足げに見て、再び影が元のサイズに戻っていった。
「……えっと」
『あ、そいつ本物だからなマスター』
「先に言ってよ!」
「わかってもらえたようで嬉しいよ。本題に戻るが、君の目的は覇王、そうだろう?」
「……なんでそれを?」
なるほど、この老人がグラファだというのは間違いないんだろう。それはいいが、なぜこのタイミングでよりによって僕相手に接触してきたのだろう。というか、初対面なのになんで僕の狙いが覇王にあることを知っているのか。
「こう見えても、かつては龍神とま
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ