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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン67 覇王達の戦い(前)
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りをぐるぐると周回するほかのモンスターと違い、明確な目的を持って城内に着地しようとするコースを辿っていたため下から見ると目立っていたのだ。さらによく見ると、上には3人の騎士が乗り込んでいる様子が辛うじて見えた。
 それはいいのだが、あのモンスターはどこかで見た気がする。もちろんここは精霊世界なのだから見たことがあるモンスターがいても何も不思議ではないのだけれど、でもなぜか気になる。

「ねえチャクチャルさん、あれ……あ、もういいや」

 一縷の望みをかけてうちの邪神の記憶に頼ろうとするも、指さした時にはすでにその機械龍は覇王城の中に入ってしまっていた。仕方ない、多少気にはなるけれどあれは後回しにしよう。どうせ僕もあの中に入るわけだし、何かの機会でまた見ることもあるだろう。

「どっかに抜け穴でもないもんかね。お城って言ったら隠し通路のひとつやふたつ抱えてナンボじゃないの?」
『あるとしても、外から見つかりやすければ意味がないからな?それこそ内通者でも抱えていない限り探す手間で逆に時間がかかるだろうな。なるべくリスクを抑えて侵入するとなると、ふむ』
「もし、そこの人。すみませんが、水を一杯もらえませんか」
「え、僕ですか?」

 どこからなら入れそうか覇王城を見上げていると、戦争の気配から逃げてきたのだろうか、ぼろきれのような服を着た1人の老人が話しかけてきた。片目は怪我でもしたのか包帯が巻かれており、痩せこけたその体は一目見ただけでも相当ひどい状態にあることがわかる。
 一応水妖式デュエルディスクには川の水を限界まで補充しておいたからある程度は余裕もあるし、三沢のところからもらってきた水筒の中身もまだほとんど手を付けていない。何より下手に断わるとその場で倒れそうな老人の様子を見たらとてもじゃないが断りきれず、首にかけていた水筒を外して差し出した。

「おお、ありがとうございます……!」
「あんまり飲みすぎないでくださいね?」

 残った片目を輝かせてかすかに震える手を伸ばした老人が、水筒を受けとろうとしてバランスを崩す。そのままこちらの体にもたれかかるような格好になると、細い体からは想像もつかないほどずっしりと体重がかかってきた。どこにそんな肉がついているのかと驚きつつも、どうにかその体を支えて起き上がらせようとした……その時、こちらの耳元に顔を近づけた老人が先ほどの弱々しい声とはまるで違う低い声でそっと囁いた。

「……覇王と戦いたいなら、後ろに付いて来なさい」
「え?」
「おお、すみません。では、一口だけ頂きます」

 またもや弱々しい声に戻り、一口だけ中身を飲んで水筒を返す老人。そのまま今にも倒れそうな足取りで背を向け、ふらふらと覇王城から離れていく。その後ろ姿はやはりただの老人そのもので、さっき聞いた声
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