ターン67 覇王達の戦い(前)
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三沢達と離れてから、2日目の朝。ようやく見えてきた覇王城を、僕は複雑な思いで見上げていた。普通に歩けばもう少し早くたどり着けたはずだが、囮役としてわざと目立つように歩いたり、そうかと思えばふらっと身を隠したり、と色々気を遣って歩いてきたため余分な時間がかかってしまった。
……そう、かかってしまった、だ。どうやら覇王は僕の安い挑発には乗ってくれなかったらしく、スノウを追い返してから僕に対する追手はまるで来ていない。その部分を僕が読み間違えたせいで、陽動に賭けた時間は完全に無駄になってしまったわけだ。この遅れが、命取りにならなければいいけれど。
しかしこうして見ると、覇王城は大きい。前回放りこまれた闘技場も大きかったけど、あれが目じゃないぐらいのサイズだ。しかも城の周りには前来た時にはいなかった巨大なドラゴン族モンスターや鳥獣族モンスターの精霊が飛び回っており、実物以上に大きく見えてくる。これだけのモンスターが来ているということは、つまりそれだけ覇王軍の招集が進んでいるということだろう。
『騎乗型のモンスターがあの数か……食料も与えないわけにはいかないだろうし、いくらあの大きさの城でもあまり悠長にしている余裕はないだろうな。下手すると今日の内には進軍が開始されるとみて間違いないだろう、マスター』
「りょーかい。だったら急ごうか、今日中に覇王を倒せば何も問題ないわけだし。改めて第2ラウンド、リターンマッチと洒落込もうかね……!」
口癖ともなった呟きで気合を入れ直し、覇王城までの道をただ歩き出す。幸い徴兵が進んでいるせいか、城を正面に見ながらの一本道でも誰ともすれ違うことはなかった。城壁の前まで来たところでダークシグナーのマントを体に巻きつけて顔を隠し、極力目立たないようにそっと上空の様子を窺う。見回りの兵士が何度か近くを通ったが、デュエルディスクが腕に付いていないことを確認したら話しかける事すらせずに遠ざかっていった。難民か何かだと思われたんだろう。
「んー、やっぱ空路かなあ。チャクチャルさんはどう思う?」
空路、というのは上空を飛び回るドラゴンたちのことだ。あれだけいればこっそり僕がモンスターを出して混ざっても気づかれる可能性は低いだろうし、一度入り込んでしまえばあとは適当な窓から何食わぬ顔で入り込めばいい。悪くないアイデアだと思ったが、うちのブレインはやや否定的だった。
『やめた方がいいな。確かに侵入まではさしたる困難もないだろうが、そこからどうする?入り込んでしまえば地の利は敵方にある。徴兵のせいで見回りの密度も増しているだろうしな』
「なるほど……ん?あれ?」
チャクチャルさんの言葉ももっともなので、空路は諦めて改めて空を見上げる。そこでふと目に付いたのが、1匹の鈍く光る生体金属の龍だった。覇王城の回
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