第十章 仮想世界
第13話 揺れる心
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いつかない。色々な可能性があるわけではなく、ただただ分からない。
視線を自分の手に戻すと肉まんとピザまんが少し冷めているのが分かった。
鞠奈「……冷めないうちにたべちゃお」
言って自分が買って貰った肉まんからかじり出す。冷めても肉まんは相変わらず美味しかった。
少しずつその量を減らしていく。同時に色々なことが頭の中を渦巻きながら鮮明に思い出していった。
初めて自分の名前を呼んでくれたこと。
彼の困った顔が可愛かったこと。
情緒不安定だけどしっかり自分の話を聞いてくれたこと。
おごってくれた肉まんがどうしようもなく美味しかったこと。
彼が差し出してくれたピザまんもとても美味しかったこと。
そして、最後の一口を口に入れて、肉まんを完食する。
鞠奈「……」
同時に、どうしようもない虚無感が鞠奈を襲った。
何かを失った感覚、というよりは何かを失ったことに気づかされた感覚。
鞠奈「……そう、これで良かったの」
自分に言い聞かせるようにポツリと喋る。自分のお父様から受けた命を執行するためには、これは必要不可欠な行動なのだ。
だから上条を改めて敵と認識させて自分との距離を一定に保つ。
そう、これが最善の選択なのだ。
なのに。
鞠奈「……なんで私は泣いてるの?」
目からあふれ出る大粒の涙を、鞠奈は止めることが出来なかった。
気づけば、手に持っていたピザまんはとっくに冷め切っていた。
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