第十章 仮想世界
第13話 揺れる心
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、そのお父様ってのは誰なんだ?」
それは、軽い気持ちで聞いたつもりだったのだ。恐らく自分の知らない有名な研究員が作ったんだろうと、勝手に解釈していたのも原因だったのかもしれない。
だからこそその名を口にしたとき、上条は珍しく恐怖したのだ。
「DEMインダストリー社の現社長、アイザック・ウェスコット」
――――
―――
――
―
「な――」
一瞬、何かの間違いかと思った。
そりゃそうだ、DEM社といえば何度か精霊達を殺そうと上条達を邪魔してきた連中だ。。
初めてこちらに干渉し出したのは修学旅行の時。本格的に敵と認識して戦ったのは学園祭の時。
どちらの時もDEM社には嫌な思い出しかない。
だが大事なのはそこではない。問題は精霊を敵対視している連中がなぜ精霊を作り出したのかという点だ。
上条「DEM社が精霊を人工的に作るなんてそんなことが――」
鞠奈「あるのよ実際!私の存在がそれを示してるの!!キミにとってDEM社は敵かもしれないけど私にとってはお父様がいる大事な会社なの!!」
投げつけるように叫ぶ鞠奈に上条は何も言えなかった。一般的にみれば極悪な人間でもそれが大事な人となれば見方はがらりと変わってくる。アイザック・ウェスコットを大事な人と呼ぶ鞠奈のように。
鞠奈「……キミは敵なのね」
上条「……俺はお前の力にはなりたいと思ってる」
鞠奈「でも、キミがアイザック・ウェスコットを敵と見なしているなら、キミは敵」
上条「……」
鞠奈「さよなら」
鞠奈は上条に背を向けて、街頭のない暗闇へと歩き出していった。
上条は引き留めたい気持ちでいっぱいだったが、相反するかのように身体は動いてくれなかった。
まるで、自分には彼女を救うことが出来ないと言っているように。
――――
―――
――
―
鞠奈は上条と別れて、特に行く宛てもなく歩いていた。
自分の手には、上条が自分のために買ってくれた肉まんとピザまんがある。
鞠奈「……って、私あいつのピザまんも持ってきてるじゃん」
一口ほおばった直後ぐらいから話の続きをしたのですっかり忘れていた。
返しに行こうかとも思ったが、あんな別れ方をしたものだから少し気まずい。それに今戻ると色々言われそうで少し怖く感じる。
その時、鞠奈は自分の考えていることに違和感を覚えた。
鞠奈「怖い……?なんで今私は怖いと思ったの……?」
説教されるわけでもないし、突然暴力を振るってくるわけでもないのに何故怖いと思ったのだ?
鞠奈「分からない……」
その理由が全くと言ってもいいほど思
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