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真田十勇士
巻ノ八十 親子の別れその一

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                  巻ノ八十  親子の別れ
 昌幸は信之と幸村に強い声で告げた。
「この真田の家を分けるのじゃ」
「分けるといいますと」
「どういうことでしょうか」
 二人共だ、父の言葉の意味がわからずに問い返した。
「申し訳ありませぬが言われる意味がわかりませぬ」
「それがしもです」
「ですから一体」
「どういうことなのか」
「今から話そう、まず源三郎よ」
 信之に顔を向け彼に言った。
「御主は本多殿の娘婿じゃな」
「はい」 
 その通りだとだ、信之も答えた。
「左様です」
「何かあればこの縁を使おうと思っておったが」
「それが今ですか」
「そうじゃ、御主は内府殿につけ」
 こう言うのだった。
「すぐに内府殿の前に馳せ参じてな」
「そうしてですか」
「あちらにつけ」
「それが家を残す策ですな」
「そのうちの一つじゃ」
「左様ですか」
「では御主はそうせよ」
 昌幸は嫡子である彼に告げた。
「わかったな」
「わかり申した」
 信之も応えた、そして。
 そのうえでだ、彼は今度は幸村に言った。
「御主はわかるな」
「はい、義父上とのこともあり」
「御主は治部殿じゃ」
「あの方の方にですな」
「はっきり言えば豊臣方にじゃ」
「つくのですな」
「そうせよ、わしもそうする」
 昌幸もというのだ。
「そちらにつく」
「そうしますか」
「これでどちらが勝っても家は残る」
 昌幸はここまで話して笑みを浮かべた。
「真田の家はな」
「父上、これはです」
 その笑みを浮かべた昌幸にだ、信之は問うた。
「かつての源氏の」
「うむ、保元の乱の時のな」
「あえて上皇方と帝方に家を分けた」
「それと同じじゃ」
「左様ですな」
「しかしあの時は」
 今度は幸村が言った。
「源氏は殺し合いその結果」
「家は滅んだな」
「そうなりましたが」
「わしは家を分けたが殺し合うつもりはない」
 それは一切、というのだ。
「真田の家はそうであろう」
「はい、内輪揉めはするな」
「何があろうとも」 
 信之も幸村も父の言葉に応えた。
「そうありますな」
「確かに」
「そうじゃ、源氏の様になってはならぬ」
 それは絶対にというのだ、昌幸もまた。
「そこは絶対にな」
「では一体」
「どうされるのでしょうか」
「分かれても争わぬとは」
「それは一体」
「どちらか一方は必ず勝つ」
 昌幸はまたこのことを言った。
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