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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト〜ヨハン・マテウスの回想
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やばいよ、やばいよ、やばいよ。トラウンシュタイン産のバッファローって何んだよ、それ。御禁制? なんでそんなのが有るんだよ。バルツァー船長も乗組員たちも黙ったままだ。みんな積荷が何か知っているぜ、あれは。確信犯だよ、絶対に。
仲間は皆不安そうな表情をしている、俺も多分同じだろう。変わらないのはお嬢だけだ。どういうわけか楽しそうな表情をしている、状況分かってんのか、こいつ。
俺が不安に思っているとお嬢とバルツァー船長がなにやら遣り合っている。“言いがかり”だとか“早く解放しろ”だとかだ。バルツァー船長は自信満々だ、多分貴族が後ろについてるんだろう。いけ好かない親父だが触らぬ貴族に祟り無しだ。さっさと帰ろうぜ、意地を張るなよ、お嬢。
「残念ですがそうは行きません。バルツァー船長、協力していただけないのなら貴方達には全員ここで死んでもらいます」
「!」
おいおい、何言ってんだよ、正気か、お嬢? ワーレン少佐もギョッとしているぜ、頭大丈夫か?
「何を馬鹿なことを言っている。我々を全員殺すとはどういうことだ?」
バルツァー船長が顔を真っ赤にしてヴァレンシュタイン中佐を怒鳴りつけた。全く同感だ、もっと言ってやれ。
お嬢は穏やかに微笑みながらバルツァー船長を見ている。やばいよ、これ。どっかおかしいんじゃねえの?
「交易船パラウド号は海賊に襲われ、乗組員は全員死亡、積荷も奪われ、船は海賊の攻撃により跡形も無く爆発、そういうことです」
「馬鹿な、何を言っている。お前達が臨検しているという事はオーディンに知らせたのだぞ」
「なるほど雇い主はオーディンですか、まあもうどうでも良い事ですが……。海賊は第一巡察部隊の名を騙ったのですよ、バルツァー船長。臨検と称してパラウド号に乗り込み貴方達を皆殺しにして積荷を奪った。本物の第一巡察部隊が来たときには海賊は既に立ち去りパラウド号の残骸しか残っていなかった。大変残念です」
「……ざ、残念だと」
残念じゃねえよ! 全員皆殺しって何だよそれ。笑いながら言う事か? 頭おかしいぞ、お嬢。バルツァー親父が顔を青褪めさせて抗議している。ワーレン少佐がお嬢を止めに入った。
「ヴァレンシュタイン司令、いくらなんでもそれはやりすぎです。もう彼らも分かったでしょう。こちらの取調べに協力するはずです」
そうだよ、その辺で勘弁してやれよ、お嬢にしては良くやった。それは認めるからさ。
「甘いですね、ワーレン少佐」
げっ、何言ってんだよお嬢。ワーレン少佐に“甘い”! 気でも狂ったか? 早く謝るんだ! ワーレン少佐もむっとしてるぞ、どうなってもしらねえぞ!
お嬢とワーレン少佐が話をしている。段々ワーレン少佐の顔が強張ってきた。おいおいワーレン少佐が負けてるよ、嘘だろ。二人が近づいて小声で
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