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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト〜ヨハン・マテウスの回想
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」
思わず恐る恐る尋ねると姉は興奮して俺にまくし立てた。
「何言ってるのよ、ヴァレンシュタイン中佐が艦長の艦じゃない」
「え? 艦長って決まってるの。俺が聞いた話じゃ、まだ決まってないってことだったけど」
「最新情報よ、軍務尚書、宇宙艦隊司令長官の推薦で中佐が艦長兼第一巡察部隊の司令になったの!」
ヴァレンシュタイン中佐? サイオキシン麻薬、アルレスハイム星域の会戦で有名になった、あのヴァレンシュタイン中佐か……。その中佐が艦長? しかも軍務尚書、宇宙艦隊司令長官の推薦? すげえな、俺とたいして歳も変わらないはずだけど……。
「あんた、中佐からサイン貰ってきてよ」
「はあ? サイン?」
「そうよ、サイン、後で色紙渡すから貰ってきてよ。あの山猫供にギャフンと言わせてやる」
姉は妙に力んでいる。何なんだ、一体。
「姉さん、山猫って何さ」
「山猫よ、兵站統括部の女どもよ」
俺が訝しげにしているのが不満だったのだろう、姉はさらにまくし立てた。
「いい、兵站統括部っていうのはね、碌な男が居ないの。分かる? 山奥で人が居ないところなのよ。そこに居る雌猫どもだから山猫なの!」
「随分酷い言い方をするんだね」
「何言ってるの、あいつらの肩を持つの、あんた」
「いや、そういうわけじゃないけど」
やばい、姉の目が吊り上がっている。よっぽど兵站統括部の女性兵に頭に来ているみたいだ。
「あいつら油断できないのよ、時々軍務省とか宇宙艦隊司令部に来て男をかっさらっていくんだから。分かる? あいつ等はほんとに手癖の悪い山猫なの!」
「……」
姉は以前、男に振られたと言ってたけど、まさか山猫に男を取られたのか? 気持は分かるけどこの荒れようは姉の方が山猫だ。
「おまけに中佐と一緒にケーキ食べてる写真なんて持ってるし、むかつくのよ! ヨハン! サイン必ず貰ってくるのよ!」
「ああ、分かったよ」
「それと、中佐の足を引っ張るんじゃないわよ、分かった!」
「もちろんだよ。そんなことするわけないじゃない」
とりあえず、此処は逆らわずにいよう。目を吊り上げてまくし立てる姉は間違いなく山猫だ。あの紅い爪で引っ掻かれたくない。
帝国暦484年 5月23日 巡航艦 ツェルプスト ヨハン・マテウス
「駆逐艦ラウエンより入電、レーダーに感有り」
「位相は」
俺が駆逐艦ラウエンからの報告を伝えるとワーレン少佐は重厚な口調で問いかけてきた。いかにも頼りがいのある、指揮官の声だ。この艦を動かしているのはやっぱりワーレン少佐だ。俺は憧れを感じながら少佐に答えた。
「八一七宙域を九一三宙域に向かって移動中との事です」
俺の返答にワーレン少佐はヴァレンシュタイン中佐に視線を向ける。
「全艦に命令
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