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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
御落胤 (その1)
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いか?」
部屋の中に痛いほどの緊張が走った。もしそうなら、元帥は陛下の孫と言うことになる。しかし、本当にそうなのか?
「四百四十一年でございます」
「……。そうか、間違いない、予の娘じゃ」
その瞬間、部屋の中にざわめきが起きた。顔を見合わせるもの、小声で呟くものがいる。リヒテンラーデ侯は首をしきりに振っていた。
「恐れながら陛下、陛下は当時、御歳十七歳かと存じますが?」
「そうじゃ、予がフレイアと出会ったのは十六の時じゃった、それがどうかしたか、ブラウンシュバイク公よ」
その言葉を聞くとブラウンシュバイク公は言いづらそうに言葉を続けた。
「陛下、フレイア・ラウテンバッハの傍には40代の男が居たそうです。その娘は陛下の御息女ではなく、その男の……」
「グリンメルスハウゼンじゃ」
「!」
「その男はグリンメルスハウゼンじゃ。あの男は予とフレイアの事を知っておった。予に頼まれてフレイアの様子を見ていたのじゃ」
「……」
ブラウンシュバイク公は陛下を見たまま絶句している。グリンメルスハウゼン、陛下の侍従武官として常に陛下の傍近くに居た男。その男が若い二人を見守っていた……。
「ブラウンシュバイク公、娘の名はヘレーネじゃな」
「はい」
「娘ならヘレーネ、男ならエーリッヒ、予が決めた名じゃ。そうか、孫につけたか……」
そう言うと陛下はじっと目を瞑った。かつての若い日々の事を思い出しているのだろうか。四十年以上前のことを。リヒテンラーデ侯が躊躇いがちに陛下に問いかけた。
「陛下、先程流産と聞きましたが、それは?」
「グリンメルスハウゼンが、フレイアが流産したと言ったのじゃ」
呟くように陛下が答えた。
「何故、そのようなことを」
ラムスドルフ上級大将の問いに陛下は哀れむような視線を向けた。
「そちも分からぬか……、当時の予もフレイアに夢中で分からなかった。今なら分かる、ようも予を騙しおった……」
「……」
「皇族が名も無い平民の娘を愛する。そのような事を父オトフリート五世が許すと思うか? 兄リヒャルト皇太子、弟のクレメンツが認めると思うか?」
「……」
「アンネローゼでさえ爵位も持たぬ下級貴族と蔑まれるのじゃ。平民のフレイアがどのように扱われるか、その方らも想像がつくであろう」
「……」
「到底許されまい。母娘ともに殺されよう。あのまま予がフレイアを愛し続ければ、必ず何処かで皆に知られたじゃろう。今なら分かる、グリンメルスハウゼンはそれを恐れたのじゃ」
そう言うと陛下は遣る瀬無げに首を振った。確かに陛下の言うとおり、フレイア親子の命は無かっただろう。グリンメルスハウゼンが隠したから親子は生き延びた。
だがヘレーネは夫、コンラートと共にカストロプ公に殺
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