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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
御落胤 (その1)
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ッハとは、テオドール・ラウテンバッハの娘か?」
「!」
執務室に緊張が走った。リヒテンラーデ侯、クラーゼン元帥、ラムスドルフ上級大将と顔を見合わせる。皆信じられないと言った表情だ。まさか本当に憶えがあるのか? 元帥は本当に陛下の血を引いているのだろうか?
フレイア・ラウテンバッハの名を聞いてから、陛下は何処と無く困惑した表情を隠そうとしない。どういうことだろう、憶えはあるが、納得はしていない、疑問が有る、そういうことだろうか。
「答えぬか、ヒルデスハイム伯」
「し、臣には、分かりかねます」
「そちは調べたのではないのか?」
陛下は先程までの困惑した表情を捨て、強い口調でヒルデスハイム伯を問い詰めた。
「も、申し訳御座いませぬ、其処まで詳しくは……」
「誰なら分かるのじゃ?」
「ブ、ブラウンシュバイク公なら、あるいは」
「呼べ! ブラウンシュバイク公を呼ぶのじゃ、ヴァレンシュタインも呼べ」
その声とともに転げ出るようにヒルデスハイム伯が執務室から逃げ出した。考え込んでいる陛下にリヒテンラーデ侯が戸惑いながらも声をかけた。
「陛下、その女性に心当たりが御有りなのですな?」
「似ておる、確かにフレイアに似ておる、じゃが流産したと聞いた、違うのか……」
リヒテンラーデ侯の問いにも答えず、陛下は呟いた。しかし、流産?
「あれは、予の孫なのか、エーリッヒ、エーリッヒか……、そうか、そういうことか、危ういと見たか……」
陛下は低く呟きながら、考え込んでいる。私は、いや、私以外の人間も全て、口を開く事が出来ず、ただ何度も顔を見合わせ、陛下を見つめ続けた。
足早に近づく音と、太い声が聞こえた。
「ブラウンシュバイク公だ、陛下のお召しと伺った」
「入るが良い、ブラウンシュバイク公」
陛下の声が発し終わると共に、ブラウンシュバイク公が執務室に入ってきた。少し息が切れている。急いできたのだろう。
「挨拶は無用じゃ、公に椅子を与えよ、水もじゃ」
陛下の声とともに、女官が椅子と水を用意した。ブラウンシュバイク公は水を飲み干すとグラスを女官に渡し、挨拶をしようとしたが、陛下に無用と苛立たしげに止められ椅子に座らせられた。
公が椅子に座るのも待ちきれぬように陛下が問いかけた。
「ブラウンシュバイク公、フレイア・ラウテンバッハを知っておるか?」
「はっ。存じておりまする、ヴァレンシュタイン元帥の母方の祖母に当たりまする」
陛下はブラウンシュバイク公の答えに大きく頷くと身を乗り出して公に問いかけた。
「フレイアの父の名はテオドールか」
「! 陛下には御存知であられますか」
「そうか、では間違いなくあのフレイアなのじゃな……。公よ、フレイアの娘は何時生まれた、四百四十一年ではな
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