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ポーリーヌ
第五章
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「今は船に乗られる者は決まっていますので」
「では」
「ポーリーヌ様がそうされたいのなら」
 あくまでだ、そう思えばというのだ。
「後でいらして下さい」
「わかりました、ではお母様と共に」
「そうされて下さい」
「待っている」 
 ナポレオンは涙を流していた、そのうえで妹に言った。
「そなたと母上をな」
「必ず参ります」
 妹も約束した、だが今はだった。
 ナポレオンは彼と残った側近達とだけで船に乗った。そうしてそのうえで旅立ったがポーリーヌは実際にだった。
 彼女の母と共にエルバ島に来た、そのうえで兄に言った。
「何か困っていることはありますか?」
「そなた、宝石を売ろうとしたそうだな」
 ナポレオンは島に来た妹にまずはこう問うた。
「余が困っていると聞いて」
「それが何か」
「礼を言う」
 涙を流しそうな顔でだ、ナポレオンはその妹に礼を述べた。
「すまない」
「ですから妹ですから」
「だからか」
「そうしたまでのことです」
「そうなのか」
「何でもないことですが」
「そうかも知れない、だが有り難く思う」
 ナポレオンは涙を流したままポーリーヌに言った。
「ここまで来てくれたしな、実際に」
「お兄様達もお姉様や妹達も」
「そなたと母上だけだ、来てくれたのは」
「家族ですが」
「家族でもこうしたものだ、落ち目になるとだ」
 人間そうなってしまうと、というのだ。
「こうなることがわかった、だが」
「それでもですか」
「そなたの様な者もいるのだな、そのこともわかった」
「左様ですか」
「余を気にかけてくれている者が」
「兄妹ですしいつも気にかけて下さいましたから」
「余がそなたをか」
 ここでこのことを思ったナポレオンだった。
「それでか」
「左様です」
「そのこともあったか」
「ですから参りました」
「全てわかった、だがそれでも来ない者は来ない」
 多くの側近達、家族達だ。ナポレオンはこれまで厚遇したが自分を見捨てた彼等のことを思いつつ述べた。
「そう思うと余はいい妹を持った」
「そう言って頂けますか」
「それが今わかった」
 涙と共に言うのだった、そしてだった。 
 ナポレオンはポーリーヌにあらためて礼を言った、そいの後彼は復権したが再び敗れ今度はセント=ヘレナ島に流された。そこでまたポーリーヌが彼の身を案じていることを聞いて言った。
「やはり余はいい妹を持った」
 遠く離れた場所にいる妹を見て言うのだった、自分はこれ以上はないまでに素晴らしい妹を持ったことを有り難く思いつつ。
 ナポレオンの妹の一人ポーリーヌは彼がよく叱った不肖の妹と言われている、しかしその彼女が彼を最も愛して気にかけていた。このこともまた事実だ。ナポレオンは出来の悪い妹をいつも
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