第一章
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ポーリーヌ
ナポレオン=ボナパルトはその話を聞いた時まずは顔を顰めさせた、そのうえでやれやれといった顔になり話をした侍従に言った。
「またポーレットだな」
「そう言われますか」
「実際にまた、だからな」
こう侍従に言うのだった。
「これで何度目だ」
「そう言われますか」
「困った奴だ」
ナポレオンはこうも言った。
「一体」
「それは」
「そなたも答えられないな」
「申し訳ありません」
「謝る必要はない、しかしだ」
ここでだ、ナポレオンは彼の妹であるポーレット=ナポレオンのことについて頭の中で思い出してからだ、こう言ったのだった。
「多いな、今数えてみたが」
「頭の中で」
「そうしたが多い」
侍従に憮然とした顔で言った。
「恋愛沙汰がな」
「大層男性に愛される方なので」
「余の妹達の中でもとりわけな」
兄としてだ、ナポレオンは彼女の美貌についても言及した。
「明るくて気軽な性格もありな」
「余計にですね」
「もてる」
ポーリーヌ、彼女はというのだ。
「そしてあれも自分から求める」
「それでは恋愛沙汰が起こるのも」
「道理だ、それも次から次にとな」
侍従に困った顔でまた言った。
「今回もな」
「そうなりますね」
「そうだ、しかしだ」
「それでもですか」
「この件も放置出来ない」
「左様ですか」
「皇帝の妹が恋愛沙汰の騒動などだ」
それこそ、という口調での言葉だった。
「話にもならない」
「起こしてはなりませんね」
「そうだ、だからだ」
「今回の件もですか」
「私が直々に収める」
「そうされますか」
「そしてだ」
ナポレオンはさらに言った。
「すぐにポーレットをここに呼んでだ」
「そして、ですか」
「怒る、それではな」
「ポーリーヌ様をこちらに」
「すぐに呼ぶのだ」
こうしてだ、ナポレオンの前に面長で整った顔立ちの女が連れて来られた。形のいい小さめの頭に黒髪とはしばみ色の目がよく似合っている。その美女がナポレオンの前に連れて来られてこう彼に言った。
「兄上、怒っておられますか」
「見ての通りだ」
実際に怒った顔でだ、ナポレオンはその美女ポーリーヌに応えた。
「ここに呼ばれた理由もわかっているな」
「はい、よく」
「全く、何故そなたはいつも」
「いいではないですか、別に」
「よくはない、昔からそうだな」
「好きですから」
ポーリーヌはにこにことしてだ、己の前で座っている兄に言葉を返した。
「遊びが」
「そうした遊びもか」
「はい」
「悪びれずに言うな、しかしだ」
「それでもですか」
「そうしたことは許されない」
絶対にと言うのだった、これがナポレオンの言葉であり考え
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