第六章
[8]前話
「そうさせて頂きます」
「それではな、僧侶殿も弟子殿も達者で」
キホーテは彼等にも声をかけた。
そのうえで部屋を去り聖杯城に向かった、彼は満面の笑顔であった。
キホーテが去ってからだ、僧侶は弟子に言った。
「まさかです」
「聖杯城の王をお呼びするとはですね」
「思いませんでした」
「思い出したのです」
「あの城、そして王のことを」
「そうでした」
「あの城に行けるのは完全に清らかな者のみ」
このことをだ、僧侶は言った。
「それでは」
「はい、私は幸いです」
「清らかであった」
「ですからあの城に行けたのです」
「だから私にも言ったのですね」
「そのことを思い出して」
まさにそれでというのだ。
「あの城に行くことが出来ていて」
「行った」
「そしてキホーテさんを迎えに来てもらったのです」
「そうでしたか、それは何よりです」
僧侶もここまで聞いてだ、微笑んで述べた。
「全ては貴方のお陰です」
「いえ、全ては神のご加護です」
「そう言われますか」
「はい、そうでした」
まさにというのだ。
「あの方が聖杯の城に導かれることも」
「全ては神のですね」
「そして聖杯の城の王のです」
パルジファル、彼のだ。
「お力故にです」
「全てはそうなった」
「そう思います」
「何はともあれよかったです」
パンサは微笑んで言った、自身の主のことを。
「旦那様はこれからも騎士として生きられますね」
「はい、聖杯の城で」
弟子はパンサに笑顔で答えた。
「そうされます」
「やっぱりあの方は騎士であられるべきです」
「それが為に」
「よかったです、本当に有り難うございます」
パンサは弟子に心からの感謝の言葉を述べた、そうしてだった。僧侶と三人でキホーテの新しい門出を祝った。聖杯の騎士となった彼のそれを。
ドン=キホーテ異伝 完
2016・11・21
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