第四章
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「主殿、そうなるとのことなので」
「わしはか」
「はい、安心してです」
「眠っていいというのか」
「左様です」
「そうであればいいがな」
キホーテは先程よりもさらに弱くなっている声で応えた、その声に希望はなかった。彼はその声でさらに言った。
「わしが。幸せに世を去ることが出来るのなら」
「必ずや」
パンサは何とか主ということにして仕えていたキホーテを励まそうとする、彼は必死に希望にすがっていた。僧侶も同じでだ、弟子は確かな顔だった。
蝋燭に照らされている部屋の中は暗い、木の壁と扉が照らされているが夜の闇の中で重苦しい感じだった。
その扉をだ、ノックする音が聞こえてきた。弟子はその声を聞いて言った。
「来ました」
「貴方がお呼びした方が」
「はい」
今まさにというのだ。
「来られました」
「そうなのですか」
「では今から」
弟子はその者を部屋に入れた、そして中に入って来たのは。
漆黒の甲冑に全身を包んだ騎士だった、顔は兜で見えない。首まで完全に覆ったヘルメットである。右手には槍、左手には盾がある。
騎士は一旦槍と盾を部屋の端に置きそのうえで僧侶達に言った。
「今から兜を取るが」
「はい、そうされますか」
「そしてこの者と話をしよう」
こう言ってだ、実際にだった。
騎士は兜を取った、そこからは整った金髪と見事な青い目の精悍な若者の顔があった。実に端整な顔である。
しかも背も高い、僧侶達やパンサよりも頭一つ分高い。その騎士はキホーテのところに歩み寄ると彼に対して言った。
「ドン=キホーテを」
「わしを呼ぶのは貴方か」
「そうだ」
穏やかで気品と威厳もある声だった。
「私だ」
「貴方は一体」
「そなたを呼びに来た者だ」
「わしを」
「そなたの騎士ぶり見せてもらった」
まさにそれをというのだ。
「全てな」
「お恥ずかしいところを」
「何を言うか、見事だった」
彼の騎士ぶり、それはというのだ。
「素晴らしい騎士だ、そなたは」
「有り難きお言葉、しかしもう騎士は」
キホーテは騎士に顔を向けつつ彼がわかったことを述べた。
「この世には」
「いや、騎士は常にだ」
騎士はキホーテのその言葉を否定してこう言った。
「必要とされる、円卓でも聖杯でもだ」
「聖杯でも」
「そなたは見事な騎士だ」
またこうキホーテに言った。
「だからだ」
「それでと言われるか」
「そうだ、そなたは余と共に来るのだ」
やはり微笑んで言うのだった。
「聖杯の城、モンサルヴァートまで」
「まさかあの城は」
「本当にあるのだ、そこには選ばれた騎士達が集っている」
「そしてわしも」
「選ばれたにだ」
その騎士達の一人にというのだ。
「だからだ、いいな」
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