第三章
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「この辺りにそうした森があったとは」
「この国の、正確に言えば修道院ではなく城でしょうか」
「城ですか」
「はい、そうなります」
正確に言うと、というのだ。
「そこにお邪魔してです」
「その方にですか」
「お願いしました」
「そうだったのですか」
「はい、そして戻ってきました」
その森の中にあった城からというのだ。
「今しがた」
「では」
「その方も間もなく来られます」
「キホーテさんの枕元に」
「そしてそのうえで」
「あの方を救って頂けるのです」
「必ず」
弟子は確かな声でだ、師匠に答えた。僧侶は弟子のその言葉にわからないものを感じていたがそれでもだった。
彼が嘘を言っているとは思えなかったので彼を連れてキホーテの死の床に向かった。そこにはパンサが項垂れていた。
パンサは僧侶と弟子を見るとだ、二人にこれ以上はないまでに悲しい顔で言った。
「この方はおそらく」
「間もなくですか」
「この世を去られます」
こう言うのだった。
「このまま」
「そうですか」
「まだ何とか喋ることは出来ますが」
「何と悲しいお顔か」
僧侶はキホーテのその顔を見て言った。
「この様な悲しみのまま世を去られるのか」
「はい」
パンサも答えた。
「そうなります」
「そうですか」
「何とかなりませんか」
僧侶にすがる様にしてだ、パンサは彼と弟子に頼み込んだ。
「この方は決して悪い方ではないのです」
「それは私も承知しています」
「ただひたすら騎士に憧れていただけで」
「そうした方だったのですね」
「生真面目で勇敢で一本気な方なのです」
「それが過ぎただけですね」
「そうです、そのお心は非常にいい方なのです」
それがキホーテだというのだ。
「ですから」
「それで、ですね」
「是非、この方を安らかに」
「わかっています」
弟子がだ、パンサに答えた。それも確かな声で。
「あと少しお待ち下さい、そうすれば」
「この方は」
「安らかに旅立つことが出来ます」
そうなるというのだ。
「ですからご安心下さい」
「そうですか」
「はい、おそらく間もなく来られます」
「その方は」
「そしてキホーテさんを救われます」
「そのお言葉信じさせてもらいます」
パンサは弟子に希望を取り戻した声で応えた。
「それでは」
「はい、必ずや」
弟子も約束した、パンサはその言葉を受けてからキホーテに顔を向けて彼に話した。
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