第三章
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「これからな」
「そうするか」
「よし、来てくれるか」
「ならばわし等についてきてくれ」
二人は山伏達を蝸牛と思ったまま彼等の言葉を聞いてまた言いました。
「ではな」
「宜しく頼むぞ」
「わかった、ではな」
「里までまいろうぞ」
「祈祷か何かわからぬが」
「行こうぞ」
山伏達も頷いてでした、そのうえで。
二人は山伏達を連れて山を降りました、そしてです。
主の屋敷に戻って主に山伏達を見せて言うのでした。
「蝸牛を連れて来ました」
「こちらです」
「背中に背負っていて角があります」
「これですな」
「待て、これは山伏ではないぞ」
主はすぐにです、したり顔の二人に言いました。
「これは山伏という者達じゃ」
「ですが荷物を持っております」
「角もありますぞ」
「蝸牛は背中に背負っていて角があるとか」
「では紛れもなく」
「違う、確かにこの者達も背負っておって角があるが」
しかしというのです。
「山伏達じゃ、また御主達はへまをやったか」
「何っ、へまとは」
「そう言われますか」
「へまそのものではないか、これは許せぬ」
主は二人に怒ってさらに言います。
「今日は飯抜きじゃ、覚悟せい」
「何と、飯抜きとは」
「これはまた酷い」
「一日位飯抜きでも死にはせぬわ」
主はかんかんでした。
「覚悟しておれ」
「この酷さあんまりでござる」
「左様、飯抜きとは」
「折角山まで行って戻って来たというのに」
「蝸牛を見付けてきたというのに」
「だからこれは蝸牛ではないわ」
言い合う双方でした、その彼等を見てです。
山伏達は彼等の間で、です。顔を見合わせそのうえでお話をしました。
「わし等がはっきり答えなかったばかりにな」
「二人を飯抜きにさせてしまいそうじゃ」
「これはよくないな」
「うむ、修行をしているならな」
それならというのです。
「自分達の為に困っている者を救わねば」
「これは人の道でもある」
「ならばな」
「ここは一芝居打つか」
「そうするか」
こう二人でお話してです、そのうえで主に言いました。
「いやいや、我等は蝸牛でござる」
「二人の言うこと間違いではありませぬ」
主に言います。
「二人は失態を犯してはいませんぞ」
「ちゃんと蝸牛を見付けてきております」
「その仕事しかと果たしております」
「飯抜きになることはありませぬ」
「しかしですぞ」
主は山伏達にも眉を顰めさせて言いました。
「お二人は確かに」
「いえいえ、背中に背負っております」
「しかと」
主にその背中を向けて指差して説明しました。
「ほら、ここに」
「背負うものがありますぞ」
「それに角もです」
「これもあります」
今度は頭のそれを指
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