第四章
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「どうしても」
「そやろな、毎日状況聞いてくるしな」
「あいつとはずっと一緒でしたから」
それこそ高校で会ってからずっとだ。
「喧嘩もよおしますけど相方で」
「気にならへん筈がないな」
「どうしても」
「それはわしもや」
マネージャーもこう言った。
「御前等が事務所に入ってからな」
「そやからですか」
「気になる、けどな」
「大丈夫ですか」
「安心せい、あいつは戻って来る」
絶対にという言葉だった。
「わしも心配やけどな」
「一年で、ですか」
「あと十ヶ月や」
入院して二ヶ月で、というのだ。
「待ってればな」
「無事に退院しますか」
「そうなる、そやから待つんや」
「その時を」
「そうするんや」
こうふぐに言うのだった。
「ええな」
「はい」
「ただ、わしも毎日あいつの状況は確認してる」
マネージャーはふぐにこうも言った。
「それで御前に毎日話すからな」
「そうしてくれますか」
「御前から聞くことはない、こっちから話すで」
「すいません」
「そやから今はピンの仕事に専念せえ」
肝心の漫才は出来ないにしてもというのだ。
「それとまた漫才やる時の勉強もしてるんや」
「それは忘れてないです」
漫才師としてだ、ふぐはマネージャーに答えた。
「わし等の本職はあくまでこれですから」
「そやな、あんこうもそう言うてるわ」
「あいつもですか」
「そや、サナトリウムの中でや」
療養しているその中でというのだ。
「テレビ観たり昔の漫才師の映像観てや」
「勉強してますか」
「あいつも勉強家やろ」
「はい」
あんこうがボケでふぐがツッコミだ、それでやっている。
「わしも負けていられんと思う位の」
「そやから安心せえ、復帰したらな」
「二人でまた漫才出来ますか」
「あいつが退院した時の舞台は用意しとくわ」
漫才のそれはというのだ。
「今は他の仕事して勉強しとけ」
「そうしますわ」
「毎日あいつの状況は話すからな」
マネージャーはふぐにこう話して彼を安心させると共に励ました、ふぐはマネージャーの言葉を受けて待ち続けた。
二ヶ月が三ヶ月になりそれがやがて半年になり七ヶ月八ヶ月になりだ。
十ヶ月になってだ、ふぐは周りにこう言った。
「あと二月でや」
「はい、やっとですね」
「あんこうさん戻ってきますね」
「サナトリウムから出てきますね」
「そうしたらですよね」
「またしますね、漫才」
「あいつしかおらんわ」
本当にという言葉だった。
「わしの相手は」
「あんこうさんも入院する前そう言ってましたよ」
後輩の一人が彼に言った、今は共に居酒屋で晩飯を食べていてその場でのことだ。
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