第三章
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「そんなん」
「そやからわしがおらん間な」
「ほな聞くが御前わしが入院したらどうするねん」
ふぐはあんこうにこう聞き返した。
「その時は」
「それはな」
「同じやろ」
「そんなんしたらその一時の相方に失礼やろ」
あんこうはふぐに言った。
「それこそ」
「そやな、代理で一年やってもらって終わったらさよならとかな」
「そんなんするもんちゃうわ」
はっきりとだ、あんこうは言い切った。
「わしもそう思うわ」
「そやな」
「そやからか」
「わしもそんなことせん、そしてや」
さらに言うふぐだった。
「御前も同じやろ、相方はな」
「お互いだけか」
「一年ゆっくり養生してこい」
一年の間は、というのだ。
「それで結核治してくるんや」
「待っていてくれるんか」
「そや」
まさにという返事だった。
「そうしてこい、ええな」
「悪いな、ほな待っててくれや」
ふぐの心を聞いてだった、あんこうは恐縮した様にして頷いた。そのうえで彼に言ったのだった。
「一年で治してくるわ」
「その間待ってるからな」
「そうするな」
こう話してだった、あんこうは結核であることを公表して入院した、ブログ等で笑顔で発表してそしてだった。
ふぐもだ、テレビでこう言った。
「あいつがいない間漫才はお休みっちゅうことで」
「一年ですか」
「その間は」
「漫才せん分遊んでます」
わざとおちゃらけて言った。
「あいつも暇するし僕もっちゅうことで」
「そうですか、漫才はですか」
「しないんですか」
「それじゃあ」
「一年の間は」
「あいつが帰ってきたらっちゅうことで」
彼も笑って言うのだった、漫才の仕事は休むと公表してだ。
二人は漫才を休んだ、あんこうはサナトリウムで時間を過ごしふぐはピンの仕事だけをした。その間だった。
ふぐはマネージャーにだ、密かにこう話した。
「あいつどないでっか?」
「あんこうかいな」
「はい、今日はどないでっか」
「何もないで」
マネージャーは笑ってふぐに答えた、中年の太った男で二人にとっては非常に頼りになる兄貴分でもある。
「今日もな」
「そうでっか」
「そもそも結核はもうな」
「死ぬ病気やないですか」
「発見が早かったらな」
それこそというのだ。
「あいつみたいに一年休んだらや」
「治りますか」
「あいつは早いうちに見付かったししかも悪性やない」
結核といってもというのだ。
「その証拠に顔色もよかったやろ」
「まあ確かに」
「早いうちに入院したからや」
「大丈夫ですか」
「死ぬことはあらへん」
マネージャーも断言した。
「そやから御前は安心して仕事してたらええ」
「わかってますけど」
「それでもやっぱり気になるな」
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