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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト艦長兼第1巡察部隊司令 (その4)
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帝国暦484年 5月23日 交易船 パラウド アウグスト・ザムエル・ワーレン
「当然その人物はそれなりの地位にいる人物になりますね」
ヴァレンシュタイン中佐はバルツァー船長を見た。俺も釣られるように彼を見る。そこには不安そうに我々を見るバルツァー船長が居た。
「何だ、一体、何故俺を見る? 俺をどうするつもりだ」
「いえ、ワーレン少佐が乗組員全員を殺すのは嫌だと言うのですよ。ですから誰か一人に全ての罪を背負って死んで貰おうと言っているんです」
微笑みながら話すヴァレンシュタイン中佐にバルツァー船長はぎょっとした表情になった。
「おい、それはまさか……」
「ええ、地位から言ってバルツァー船長、貴方になりますね。他の人では誰も納得しません」
「ちょっ、ちょっと待て」
「乗組員の人も口裏を合わせてくれますよね。バルツァー船長は臨検の最中に御禁制品が見つかったことで突然自殺した。その積荷はバルツァー船長がトラウンシュタインから持ってきたもので自分達は何も知らない。バルツァー船長は積荷に自分達が近づくことさえ許さなかったと」
バルツァー船長は慌てて乗組員の方を見たが、乗組員達は皆バルツァー船長と視線を合わせようとしない。
「おい、お前達、俺を裏切るのか」
「誰だって死にたくありませんからね、仕方ないでしょう。それより自殺の方法はどうしましょうか? 此処を血で汚したくありませんし、いきなりの事で防げなかったという事にしなければならない。バルツァー船長、どんな形で死にたいですか?」
「冗談は止めろ、そんな事が許されるのか」
引き攣ったような声でバルツァー船長が抗議したがヴァレンシュタイン中佐は少しも気にしなかった。
「貴方が自殺してくれれば、皆納得してくれるのですよ。貴方の雇い主もこちらが事件を真剣に調べるつもりが無いと判断するはずです。腹は立つかもしれないが、自分の身が安全だとは理解するでしょう。そうなればこちらに対しても必要以上に報復をしてくることも無い、そうでしょうワーレン少佐」
同意を求めないでくれ、大体俺は一人を犠牲にするという考えにも納得したわけじゃない。だがここで反対するのは得策じゃない、沈黙するしかないが、バルツァー船長からは同意しているように見えるだろう。中佐殿、確かに俺は甘いよ、認める、だがお前さんは悪辣だよ……。
「……」
「ふ、ふざけるな、そ、そんな事が、ゆ、許されると思っているのか」
完全に声が裏返っていた。そんなバルツァー船長をヴァレンシュタイン中佐は冷笑を浮かべながら見ている。
「許されますよ、バルツァー船長」
「!」
「軍隊という所は上意下達、上の命令は絶対なんです。第一巡察部隊の司令は私です。つまり私の命令が最優先で実行される」
バルツァ
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