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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト艦長兼第1巡察部隊司令 (その4)
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るまい。昇進は十月の人事異動に合わせて行なうつもりだ」

嫌がらせでは有るまい。ヴァレンシュタインは今年の初めに中佐になった。未だ半年も経っていない、いや去年の今頃は未だ大尉になったばかりだったはずだ。確かに本人のためにはならないだろう。

「それまでは?」
「このまま、第一巡察部隊に置いておく」
「よろしいのかな、そのままにして。また面倒を引き起こさんとも限らんが」

いっそ、兵站統括部にでも戻したほうが良くは無いか、そんな思いで軍務尚書に視線を向けたが、軍務尚書は冷笑を湛えたまま言い放った。

「今回の一件であの小僧が猛犬である事は皆が知った。オーディン周辺の番犬にはちょうど良かろう。それでも犯罪を犯すような阿呆はあの小僧に噛殺されれば良いのだ」

「なるほど、番犬か。軍務尚書も上手い事を言われる。となると飼い主は軍務尚書という事かな」
「あんな言う事を聞かぬ犬など私は知らん。冗談でも許さんぞ、ミュッケンベルガー元帥」

唇を捻じ曲げて抗議する軍務尚書に私は今日、三度目の失笑を漏らした。全く持って厄介な小僧だ。


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