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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト艦長兼第1巡察部隊司令 (その4)
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前が囁かれているのだ。その中には我々の名前も挙がっている、不愉快な事だが。
だがもっと恐ろしい噂もある。ビーレフェルト伯爵を三人の宮内省職員を謀殺したのは皇帝の闇の左手だという噂だ。捜査が尻すぼみに終わろうとしているのも皇帝の密かな内意が憲兵隊に伝えられたからだとも……。
〜皇帝はこの事件を大きくすることを望んではいない。ビーレフェルト伯爵を、三人の宮内省職員を誅殺したことで事件に関与したものに対して十分に警告を与えた。それで十分だと考えている〜
本当かどうかは分からない。軍務尚書は憲兵隊に確認はしなかった。たとえ本当だとしても憲兵隊が事実だなどというはずが無い。確認するだけ無駄だ。
だが自分の知らないところで何かが動いている、そんな疑惑が軍務尚書を不機嫌にさせている。
「謁見室には私のほかに宮内尚書、内務尚書が呼ばれた」
「宮内尚書は分かるが内務尚書は何故?」
「警察もあの船を臨検していたのだがな、船長に脅され碌に調査もせずに引き下がったそうだ。取調べで船長が言ったらしい、警察は大した事が無かった、だからつい軍も甘く見てしまったと」
「なるほど、宮内尚書も内務尚書も御叱りを受けたという事か」
私の言葉に軍務尚書は頷いた。
「陛下は軍は良くやっている、それに比べてと仰られた」
「それは……」
思わず失笑した。それでは宮内尚書も内務尚書も立場が無い。
「笑い事ではないぞ、ミュッケンベルガー元帥。内務尚書は噛み付きそうな顔で私を睨んでいたのだ。サイオキシンに続いて二度目だからな、軍にしてやられるのは」
「軍の勢威が上がるのは良い事だと思うが?」
「必要以上に恨みを買う事は無い。巡察部隊など形だけのはずだったのだ。内務尚書もそれを知っていたからこそ不愉快には思っても反対はしなかった。そういう約束だったからな、それなのに、あの小僧めが」
愚痴をこぼすような軍務尚書の口調に私はまた失笑した。軍務尚書が私を睨むがこればかりは止められそうも無い。
「それで、彼をどうするのかな」
「昇進させる。当然だろう、陛下の財産を盗賊から守ったのだから」
「……」
「ミュッケンベルガー元帥、帝国軍三長官にはトラウンシュタイン産のバッファローの毛皮が下賜される」
「バッファローの毛皮? それは」
「第一巡察部隊が押収した毛皮だ。今回の一件に対する陛下からの軍に対する褒賞だ。我々だけが褒賞を受ける事は出来ん」
面白くもなさそうな口調だった。本当ならバッファローの毛皮を頂くことは名誉な事なのだが素直に喜べないのだろう。もっともそれは私も同じ思いだ。全く厄介な小僧だ。
「ヴァレンシュタイン大佐か、それにしても昇進が早いな」
軍務尚書が少し眉を寄せながら答えた。
「うむ、少し早すぎる、本人のためにもな
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