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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト艦長兼第1巡察部隊司令 (その4)
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う。しかしフェザーンで毛皮を入手したのだとすれば、税関のチェックをすり抜けた事になります。偶然か、それとも必然か」
「トラウンシュタインからフェザーン、フェザーンからオーディン。御禁制品を二度見逃したか。卿の言うとおり確かに怪しいな」
ケスラーが考え込みながら言葉を出す。
「ケスラー大佐、あの毛皮、反乱軍に売った場合、どのくらいの値がつくと思います?」
「想像もつかんよ。だが確かに帝国内で売るより反乱軍に売った方が安全だな」
「?」
「分からないか。帝国でこそ御禁制品だが、向こうではそうじゃないだろう。誰が持っていても問題は無い。それに帝国にはそれを確認する方法も処罰する方法も無い」
なるほど、確かにそうだ。あの毛皮を金儲けに利用しようとした人間は帝国内で売るのは危険だと考えた。そして安全な自由惑星同盟で売る事を思い付いたのだ。となればフェザーンが絡むのは必然という事だろう。
「ケスラー大佐、この件、御預かり願えますか?」
「嫌だと言ったら?」
「海賊に襲われたという事にして、船も乗組員も皆木っ端微塵にします」
ケスラーは一瞬俺の顔を見た後、大爆笑した。
「分かった、引き受けよう。卿なら本当にやりかねないからな」
「……」
冗談なんだけどね。まあ引き受けてくれたから良いか。
帝国暦484年 7月 5日 オーディン 軍務省尚書室 グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー
「軍務尚書、戻っておられたか」
「つい今しがたな」
「それで?」
「お褒めの言葉を頂いた」
お褒めの言葉を頂いた、その割には軍務尚書は余り嬉しそうではない。まあ、理由が理由だけに無理も無いのだが。
一月半ほど前、第一巡察部隊がある交易船を臨検した。その際、御禁制品であるトラウンシュタイン産のバッファローの毛皮、十枚を発見、押収した。第一巡察部隊は憲兵隊に証拠品及び乗組員を引き渡し、それ以後の捜査は憲兵隊が行なう事になった。
皇帝の私財を盗もうとした人間が居る。憲兵隊は慎重に捜査を進め、その結果ビーレフェルト伯爵が捜査の線上に上がった。だが伯爵は取調べを受ける前に自殺した。
事件そのものもビーレフェルト伯爵が死んだ事で尻すぼみに終わろうとしている。彼が毛皮を誰に贈ろうとしたのか、毛皮を手に入れるために誰と交渉したのかが分からなくなったからだ。
惑星トラウンシュタインでは三人の宮内省職員が姿を消した。おそらく反乱軍に亡命したのだろうといわれているが、一方で殺されたのだという噂もある。真実は分からない。
オーディンではビーレフェルト伯爵は自殺に追い込まれた、あるいは何者かに謀殺されたとの噂が流れている。その謀殺した人間こそが毛皮を贈ろうとした人間、あるいは交渉した人間だとして様々な名
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