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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト艦長兼第1巡察部隊司令 (その4)
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ー船長は口を魚のようにパクパクさせている。何か言いたいのだろうが、何を言って良いか分からないらしい。ヴァレンシュタイン中佐はそんなバルツァー船長の様子を見ながら、そばに居た兵士に声をかけた。まだ若い、年齢は十代後半ぐらいだろうか。
「貴官の名前は?」
「ヨ、ヨハン・マテウス二等兵です、ヴァレンシュタイン司令」
緊張するマテウス二等兵にヴァレンシュタイン中佐は柔らかく微笑みかけた。
「マテウス二等兵、私はバルツァー船長が嫌いなのですが、貴官はどう思います?」
「は、はい、小官も嫌いであります」
バルツァー船長の顔が歪むのが見えた。
「気が合いますね、マテウス二等兵。名前と顔はしっかりと覚えましたよ」
「はっ、有難う御座います」
「ところで、私はバルツァー船長は死ぬべきだと思っているのですが貴官はどう思います?」
バルツァー船長がギョッとした表情になった。飛び出さんばかりに眼を見開いてマテウス二等兵を見ている。マテウス二等兵は顔面蒼白で助けを求めるかのように俺を見た。
「ワーレン少佐が気になりますか、マテウス二等兵。大丈夫ですよ、ワーレン少佐はもう直ぐ昇進して異動です。遠慮せず、本当の事を言ってください」
ちょっと待て、どういう意味だ。まるで俺に遠慮して本音が言えないように聞こえるじゃないか。
「ヴァレンシュタイン司令」
少し冗談が過ぎます、そう言おうとした時、中佐が手を上げて俺を制止した。そして困ったような表情で話しかけてきた。
「何をそんなに怒るんです、ワーレン少佐。この宇宙から犯罪者が一人消え、我々の安全が確保される。少佐も安心してこの先過ごせる、そうじゃありませんか?」
「……」
確かにそうだ、この先安心して過ごせるだろう。だが安らかに過ごせるだろうか、罪悪感から無縁で居られるだろうか……。俺の葛藤を他所にヴァレンシュタイン中佐はバルツァー船長に話しかけた。
「貴方が死ななければならない理由はもう一つあるんです」
「もう一つ? 何だ、それは? 言ってみろ」
「もうひとつの理由は、先程も言いましたが貴方が嫌いな事です」
「はあ?」
間の抜けた声がバルツァー船長の口から漏れた。信じられないといった感じだ。
「私は貴族が嫌いなんです。特に自分のことしか考えない身勝手な貴族がね。それと貴方のように貴族の手先になって犯罪を犯すクズどもが虫唾が走るほどに嫌いなのですよ」
「馬鹿な、何を言っている、嫌いだから俺を殺すというのか?」
ヴァレンシュタイン中佐がブラスターを取り出した。無表情にバルツァー船長を見ている。普段の中佐からは考えられない冷たい表情だ。
「殺しません、麻痺させて船の外に放り出してあげます。臨検中にいきなりエアハッチを開けて外に飛び出した、覚悟の自殺
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