第七章
[8]前話
「気付かなかったわよ」
「そうなの」
「そうよ、じゃあお父さん起こして」
二人が食べてからというのだ。
「そうするわ」
「私達が食べたら」
「そうするわ、とにかく食べなさい」
由貴は娘とその親友にこうも告げた。
「朝御飯食べないと何も出来ないわよ」
「お母さんいつもそう言うわね」
「しっかりと寝てしっかりと食べてこそよ」
この二つを両立させてこそというのだ。
「一日満足に出来るから」
「だからなのね」
「そう、今日も一日頑張りなさい」
「それじゃね」
小雪は自分の母親の言葉に頷いた、そうして桐子と二人で朝食を食べた。それでトーストにバターを塗って食べつつ桐子に言った。
「お酒飲んでもね」
「全然酔わないからな」
桐子はトーストを指でちぎってシチューに点けつつ食べている、そのうえでの返答だった。
「あまりな」
「飲む気しないわね」
「味は好きになったけれど」
「酔わないならね」
「面白くないな」
「そうよね」
「私も強い自信があるけれど」
由貴は話す二人に言った、二人と向かい合っている席でオムレツを食べつつ。
「あんた達は別格ね」
「酒呑童子が後ろにいるから」
「だからですか」
「ええ、いいか悪いかは別にして」
酒が強いことについてだ。
「そのことは凄いわ」
「そうなのね」
「そのことはですね」
「ええ、まあそのことは自覚しておくことよ」
極端に酒に強いその体質はというのだ。
「何かの役に立つこともあるから」
「それじゃあね」
「覚えておきます」
「そうしておいてね」
娘とその親友に心から言うのだった、二人がはじめて酒を飲んだその朝に。まさか二人が酒に異常に強い体質だとは思わなかったがそれはそれでよしと思いつつ。
酒呑童子 完
2017・2・27
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