第六章
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「あんた達はザルだったのね」
「ああ、幾ら飲んでもなのね」
「平気だからザルですね」
「そうよ、しかもね」
ここでだ、由貴は二人の背に見た。守護霊の様なそれを。
「あんた達の背中に酒呑童子が見えるわ」
「酒呑童子ってあの?」
「退治された?」
この鬼の名前を聞くとだ、二人は顔を見合わせた。それぞれテーブルに座って朝食を待つその中でそうなった。
「首撥ねられてね」
「その首が飛んだのよね」
「物凄く強い鬼で」
「京都の方に出たのよね」
「あの鬼は物凄い大酒飲みだったのよ」
由貴は二人にこの鬼の特質も話した。
「それで鬼には毒のお酒を騙して飲まされて退治されてるし」
「だから酒呑童子なのね」
「お酒を飲むから」
「お酒が大好きでお酒で退治された」
「だからなのね」
「そうよ、あんた達の背中に見えるわ」
その酒呑童子がというのだ。
「守護霊みたいにね」
「いや、鬼が守護霊って」
「嬉しくないですよ」
小雪も桐子もこう由貴に返した。
「鬼なんかが守護霊でも」
「悪いし怖いし」
「けれど見えてるわよ」
今もというのだ。
「はっきりとね」
「私達の後ろに?」
「そうなんですね」
「ええ、どうやら私の見立て違いだったわ」
由貴はしみじみとした口調にもなった。
「あんた達はザルだったのよ、幾ら飲んでも酔わない」
「二人共ね」
「そうだったんですね」
「そうよ、けれど悪酔いしないならいいわね」
それよりはというのだ。
「別にね、じゃあ今から朝御飯出すわね」
「今日の朝御飯何なの?」
小雪は母にそのメニューを尋ねた。
「一体」
「オムレツと昨日の野菜シチューの残りとトーストよ」
「洋食系ね」
「あと牛乳ね」
それもあるというのだ。
「二人共しっかり食べるのよ」
「私もですね」
「当たり前でしょ」
由貴は桐子に微笑んで答えた。
「それは」
「そうですか」
「小雪が桐子ちゃんのお家に泊まった時も朝御飯ご馳走してもらってるから」
実際にだ、小雪もそうしてもらっている。由貴もこのことを知っているのだ。
「お互い様よ」
「そうですか」
「じゃあしっかりと食べてお家に帰ってね」
「わかりました」
「さてと、あんた達が食べたら」
由貴はそれからのことも考えて言った。
「お父さん起こして朝御飯食べてもらわないと」
「そういえばお父さんお風呂から出て寝たのよね」
小雪はここでこのことを思い出した。
「あれから」
「そうみたいね」
由貴の返事はあっさりとしたものだった。
「お母さんが寝ている間にベッドに入ってきたみたいだから」
「わからなかったの?」
「だって寝てたから」
由貴の眠りは深い、だがそれでいて幼い時小雪が危ない時
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