第四十四話 あえて罠にその八
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「今後はね」
「二度とですか」
「そこまで調べさせない」
「そのことをですか」
「覚えておかないとね」
こう言うのだった。
「私も」
「そうですか」
「そう、本当にね」
「相手が極端に腐った奴っていうのも」
「そうはいないけれど」
人間にもモラルがある、それがある限り極限まで堕ちることはないのだ。それで衝夫や鍛冶元の様な輩はというと。
「いることはいるから」
「ごく稀に」
「そう、本当に稀によ」
それこそというのだ。
「千人に一人ね」
「サイコパスですね」
「そこまでいくとね」
「どんな悪事を働いても平気な奴はいますね」
「精神医学でも言われてるわね」
「はい、確かに」
「多分その先生達はそうなのよ」
サイコパスだったというのだ。
「そうはいないのわ」
「けれどいるからにはこそ」
「注意しておかないとね」
「またそういう奴に目をつけられない様に」
「そうしていかないかも知れないわ」
「何かややこしいですね」
「今日無事に終わっても」
副所長は確かな声で言った。
「それで終わりではね」
「ないってことですね」
「今日はハッピーエンドでも」
「ハッピーエンドのまま終わらないですか」
「蓮見さんは明日もあるのよ」
優花の人生、それはというのだ。
「一生があるから」
「だからですね」
「そう、幸せな一生を過ごす為に」
優花のことをだ、あくまで考えてのことだった。
「これからもね」
「手をですね」
「打っていくべきですね」
「そうよ、蓮見さんの人生の為にも」
「滅多にいない様な奴に対しても」
「手を打たないとね」
副所長も痛感したことだった、その痛感を覚えているからこそだった。彼女は優花のことを真剣に考えていた。
そしてだ、優花もだった。副所長の言葉を聞いて彼女に問うた。
「これからもですか」
「そう、あるのよ」
「今日で終わりじゃないんですね」
「今日無事に終わっても」
それでもというのだ。
「またそうした先生みたいな人が出て来るかも知れないわね」
「はい、確かに」
「だからね」
「今日終わってもですか」
「手を打つ必要はあるわ」
副所長は優子にも話した。
「絶対に」
「そうですか」
「そう、覚えておいてね」
「わかりました」
「帰ってからも考えることになるわ」
優子にもだ、副所長は話した。
「実際に」
「その話もあるけれど」
ここでだ、優子は冷静な口調になって一人言った。
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