第二十二話 容疑者X
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スナのため息を背にしてキリトは転移門へと向かった。
第五十層主街区『アルゲード』
街はキリトとアスナを猥雑な喧騒をもって出迎えた。
ついこの前に解放された層だけあって、観光客が多い。下層、中層にいたであろうプレイヤーたちがちらほらと目に映る。
その中でも特に多いのは商人プレイヤーだ。
雑多な雰囲気のあるこの街は、今日までに解放された層と比べても、店舗の賃金が格段に安い。
理由としては、その店の外装、もしくは内装が汚かったり、店舗そのものが小さかったりするのだが、それでもここに居を構えようとする人々は多い。
プレイヤーたちが、色々な欠点がありながらこの街に居つこうとする理由を、キリトの所感を含めて述べるならばこう述べるべきだろう。
この街のアジア的なーーもっと言えば某商店街を匂わせる風貌が懐かしさを感じさせるからなのだ。
実際、なんだかんだ言いながら、キリト自身もこの街を気に入っていたりする。近々ここに居を構えるつもりでもいた。
既視感のある風景とは裏腹なエキゾチックなBGMと多数の呼びこみの掛け声。昼間から出店している屋台で立ち昇るジャンキー風味の香り。
それらは全て、魅惑の生脚を惜しげもなく披露している華麗な副団長様にはミスマッチが過ぎていた。完全に注目の的になってしまうのだ。
それを恐れてアスナを先導しようと歩いていたのだが。
「なっ、お前、なにしてるんだよ!」
ご本人様はロング丈の裾を揺らしながら、ジャンクフード(おそらく焼き鳥的ななにか)を口にしているではないか。
「ほいひーよ?(おいしーよ?)」
タレのついた肉を頬張りながら、片手に持っていた一本をキリトによこしてきた。
先ほどろくな食事もせずに出てきてしまったものだから、腹が減るのはわかる。わかるのだが、せめてタイミングというものが………。
というか、今ここでこの焼き鳥的ななにかをもらってしまえば、「おごりでごはん」の中身がこの数百コルするかしないかのものになってしまうのではないか。
慌てて出てきたレストランでの食事代は、両者から天引きされているので、あの豪華なフルコースはおごりではなくなっているわけで。
その事実を癪に思いつつ、アスナの頬張る姿が「ちょっとかわいかったな」とか思ったのを隠しながら、手渡された串焼きへヤケクソ気味にかぶりついた。
エスニックな味付けの謎肉をかじりながら、キリトはアスナに手料理を作らせてやると意気込んでいたりいなかったりしていた。
二人がキレイに二本の串を平らげると同時に目指す雑貨屋へと到着した。
汚れなどがつくわけがないのだが、それでも串を持っていた手をレザーコートにゴシゴシとこすりつけて店の中へ入った。
「相も変わらずアコギな商売やってるのか?」
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