第18話(改1.7)<タフガール>
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は、こうでなくちゃね)
海軍生活の楽しみは食事くらいだから。
……だが食堂の中には緊張した一団が居た。
「夜戦ン!」
約一人の艦娘が盛り上がっている。
「何か妙なムードだな」
私は思わず呟いた。
すると祥高さんは言う。
「彼女たちは、これから一晩中、夜間訓練をします」
「なるほど司令不在でも、きっちりと任務は継続中だな」
私の言葉に祥高さんは微笑んだ。海軍としては頼もしい限りだ。
食事をとりながら彼女は続けた。
「月に数回、軍令部の指示で作戦指令室が24時間体勢になります」
「それは定期的なものか?」
「はい。暦に従う場合と舞鶴や佐世保での戦闘状況を考慮して臨時に指示される場合があります」
「なるほど」
祥高さんは一瞬、食事の手を止めた。
「これは当番制ですが司令には随時ご入室が可能です。また状況によって緊急時には昼夜問わず司令から、ご発令頂けます」
「なるほどね」
(それは要するに鎮守府の司令は24時間体勢で待ち構えて居ろって事だな)
私は軍部の無言の圧力を感じて苦笑した。
「おや?」
私はフッと箸を止めて祥高さんを見た。
夕日を受けた規律正しい彼女の姿は、もはや『燃える艦娘』にしか見えなかった。
「祥高さん貴女、凄くタフですね」
思わず口走ってしまった。
「は?」
「いや、何でもない」
焦った私は視線をそらした。恥ずかしい。
さっきから当然のような顔をして私の隣に座っている寛代は黙々と食べている。
それでも彼女は時おり首を傾げる仕草をする。無線傍受して司令部に転送するのだろうか。ブツブツ呟くこともある。
食事が終わる頃になると艦娘たちも私に慣れてきたらしく入れ替わり立ち替わりで私たちのテーブルに来て質問攻めだ。
「美保は如何なのですか」
「もう慣れたわね」
「海軍なら当然だ」
「食べるの遅っそーい!」
特に寛代と同じ駆逐艦……電、雷、暁、島風あたりは騒がしかった。
何度か祥高さんに注意されても、またゲリラのように舞い戻って来る。
(こうなると、もはや無法地帯だな)
ただ、こうやって艦娘たちとやり取りしていると次第に一人ひとりの性格が見えてくる。
電は雷や暁に引きずられて頼り無さげだが誠実な印象だ。
島風も誤解を受けそうな外見だが風格が有り案外キッチリしている。
艦娘といえども外見だけで判断してはいけない。指揮官として十分注意すべきだろう。
「お互いに命を預ける関係になるんだよな」
私が呟くと寛代は無言で、こちらを見ていた。
『一蓮托生』という言葉がふと思い浮かぶ。
食堂の大きな窓越しには昇った月に照らされた大山が美保湾に薄っすらと影を落としているのが見えた。
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