第九話「ユーマ・ライトニング」
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もな親近感を感じたのである。
*
その後、ジョニーは施設を一通り見終えると、缶コーヒー片手に休憩室のソファーに座っていた。
――強化人間、か……
正直、公国が人間をも兵器にする行為に対して彼はやや反対的な思考を持っていた。
もちろん、公国はかつて独裁国家の歴史を持つも、今では列記とした民主主義をとなえる国として栄えている。発想の自由とその責任を担う国だ。市街地へ行けば左右思考の連中がプラカード掲げてデモ行進する姿も珍しくない。
そして、先ほどの少年は恐らく強化人間だろう。
「哀れっちゃ哀れだが……俺が何かしてできるもんじゃねぇしな?」
俺に何ができるんだ? そう、彼は自分に言い聞かせて止まっていた缶を持つ手を口へ持ってくる。
「あっ! アンタ……確かあんときのオッちゃんだよな?」
「あぁ……?」
その声は先ほど聞いた声であった。あのときの、確かガンガルの漫画を持っていたあの青年だ。もしや、ジョニーを探しに現れたのか……?
「お、お前は……」
苦手そうな顔をして目をそらすジョニーは苦笑いした。
「さっきは、ありがとな! おかげでマンガ全部読めたよ?」
「そ、そうか。そいつは何よりだ……っていうか、俺はまだ34……オッちゃんか」
そう、気が付けば自分はとっくに三十路を過ぎた中年間近の軍人であった。皮肉にも心だけが若いままなのである。
「なぁ? アンタ、何てんだ?」
「はぁ?」
「俺、ユーマ。ユーマ・ライトニングってんだ! アンタは?」
「……ジョニーだ。ジョニー・ライデン」
「ジョニーか! よろしくな?」
と、ユーマと名乗る先ほどの青年は、二カッと笑って彼に握手を求めた。
「あ、ああ……」
ジョニーは、そんなユーマの手を握り返す。
「あ、ここに居られたのですか?」
先ほどの主任が、こちらへ歩み寄ってきた。主任は、そんな二人を見ると眼鏡が光ってニタッとほくそ笑んだ。
「これは少佐……よくぞ決意してくださいました!」
「はぁ〜? 何言って……」
「こちらは、貴方のキマイラ隊に配属予定であった例の強化人間です!」
「は、はぁ!?」
ジョニーは、絡む様に主任の胸倉をつかんで静かに問う。
「おいテメ―……まさか、アイツが例の幼児性が何たらっていう強化人間じゃあるめぇな?」
「は、はい……仰る通り、彼が少佐にお頼みしました例の強化人間です」
「ふ、ふざけんな! 俺は、引き受けることなんて一言も言ってねぇぞ!?」
「しかし……あのように懐いていては、少佐以外に他ありませんよ?」
「うぅ……」
「ジョニー! 早く戻ってきてくれよ〜?」
「……」
正直、あの青年はやや面倒である。幼児性以前に面倒な性格だということをジョニーは予想した。
「あ、何でしたら……少佐には特別手当をお送りしようかと思います。何
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