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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト艦長兼第1巡察部隊司令 (その2)
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かったのだろう。俺に対し“心配をかけますね”と済まなそうに言ってきた。この辺がミューゼル大佐とは違う所だ。彼なら余計なお世話だと不満を持つだろう。
ヴァレンシュタイン中佐と俺が交易船パラウドの倉庫に着いたとき、倉庫の中では交易船パラウドの船長らしい人物が仁王立ちになって駆逐艦ラウエンから来た兵を威嚇している所だった。
「どういうことだ。何故臨検をしない」
「はっ、それが」
近くにいた兵士に聞くと、困ったように船長らしき人物のほうを見た。
「何度も言うがこの船の積荷に臨検など必要ない。この船の積荷はさるお方からの依頼によるものだ。臨検などして後で叱られるのはお前らだぞ。辺境警備に回されるなどと思うなよ、戦死することになると思え」
なるほど、そう言う事か。この船の荷物は貴族の依頼によるものらしい。あるいはそう装っているだけか。しかし貴族を怒らせることの怖さは皆が身に染みて知っている。その事が臨検をすることを躊躇わせている。厄介な事だ。あるいはこの手で他の巡察部隊の臨検をやり過ごしたか。
「ワーレン少佐、楽しい事になりそうですね」
軽く笑いを含んだ声が耳に聞こえた。ぎょっとして隣を見ると嬉しそうな表情をしたヴァレンシュタイン中佐がいる。
「失礼ですが、貴方が船長ですか」
「そうだ、船長のアンゼルム・バルツァーだ」
「小官は第一巡察部隊司令のエーリッヒ・ヴァレンシュタイン中佐です」
ヴァレンシュタイン中佐が名乗るとバルツァー船長はいかにも馬鹿にしたようにフンと鼻を鳴らした。無理も無い、中佐はいささか若すぎる、未だ二十歳に満たない年齢なのだ。
「ヴァレンシュタイン中佐。もう一度言うがこの船の積荷に臨検など必要ない。この船の積荷はさるお方からの依頼によるものだ」
「そうですか、臨検に協力して貰えないということですね」
「そうだ」
嘲笑交じりの倣岸な態度だ。こちらが何も出来ないと侮っているのだろう。ヴァレンシュタイン中佐は穏やかに微笑みながら答えた。
「残念ですね、協力していただけないのは……。仕方がありません、バルツァー船長を逮捕してください。罪状は公務執行妨害です」
ツェルプストから同行した兵が一瞬俺を見た。俺は必死に表情を押し隠し彼らに頷く。彼らはバルツァーの身柄を拘束するべく動いた。
「おい、ちょっと待て」
「それと乗組員を全員ここに集めてください。抵抗する人間はこれも公務執行妨害で逮捕してください。それから、ここでは一切私語を許しません。一言でも喋ったらこれも逮捕です」
唖然としている俺に向かって中佐は嬉しそうに微笑みかけた。
「ワーレン少佐、私達は積荷の確認をしましょうか。何が出てくるか、楽しみですね。サイオキシン麻薬か、それとも他の何かか」
そう言うと“ちょっと
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